医療用酸素濃縮装置の技術から生まれた、運動効率を高める仕組み
安全に運動効率を高める、「常圧低酸素」の空間とは
セッションの冒頭で、ダイキン工業低酸素システムのプロモーション動画が紹介された。動画は、静音性、柔軟性、信頼性が高いシステムであること、また酸素濃度を下げた空気を作り出す内部機構について説明されているものだ。映像が終わり、ダイキン工業の平山喬弘氏は開口一番、
平山氏(以下 敬称略)「弊社は、製品が安心・安全であることには自信を持っています」という一言からプレゼンテーションが始まった。低圧のトレーニング施設(他社製品)で発生した事故のニュースを受けて、その違いを強調し安全性への理解を促した。
平山「ダイキン工業の低酸素空間は、気圧はそのままの『常圧』なのです。今からその仕組みをご説明いたします。私たちを取り巻く空気の酸素濃度は21%です。そこから、酸素と窒素を分けて、酸素濃度を下げた空気を作って送り込んでおり、気圧の変化がない『常圧低酸素』空間を構築するのが特徴です」
平山「簡単にダイキン工業の『常圧低酸素』と『低圧低酸素』を比較しますと、このような違いがあります。気圧の変化がありませんから、気圧の変化による身体へのリスクはありません。また低圧の場合、気圧を上げたり下げたりする間、部屋の出入りをすることができませんが、弊社の低酸素システムは出入りは自由です。簡単に出たり入ったりができますし、扉を開放すると酸素濃度は通常に戻りますので、安心安全なトレーニングルームとしてお使いいただけたらと思います」
信頼性に加え、静音性、柔軟性が高く、用途の幅広さが特徴
平山「酸素だけでなく、二酸化炭素の濃度も自動制御できます。静音性も高いため、オフィスビルなど場所を選ばず導入することができ、ユニット構造のためスペースの広さに合わせて拡張できます」
この低酸素システムは、ダイキン工業が医療機器の「酸素濃縮装置」を開発するために用いた技術を応用し開発されたシステムだという。間違いがあってはならない医療機器での実績がすでにあるため、信頼性が高いのもうなずける。スポーツチームが導入するにあたり、トレーニング効率が上がるのはもちろんのことながら、選手が安全にトレーニングできることは重要な要素である。
低酸素トレーニングのプログラムを実践。選手交代は最小限にとどまり、走行距離・スプリント数ともに伸びた
世界大会に向けて低酸素トレーニングを取り入れピーキング
次に登場したのは東京五輪時、ブラインドサッカー男子日本代表監督を務めていた高田敏志氏だ。当時、世界大会に向けての強化期間中にチームとして低酸素トレーニングを取り入れていたとして今回ご登壇いただき、どのようにトレーニングを行っていたのかをご紹介いただいた。
高田氏(以下 敬称略)「今回はサッカーという競技での実績の紹介になりますが、陸上などほかの競技でも活用できるトレーニング方法だと思います。大会前に6週間のプロトコルを実施しました。当時、平均年齢がもっとも高く、体力的に走行距離もスプリント数も出場国のうち最下位レベルと言っても過言ではありませんでした」
ところが低酸素トレーニングを取り入れ、大会にピークを合わせて6週間前からトレーニングを開始したところ、走行距離だけでなくスプリント数においても参加国中一番の実績を出すことができ、最小限の選手交代にとどまったという。
高田「他国の代表チーム監督たちから『大丈夫か』と心配されるほど、選手たちは走り抜くことができたという記憶があります」
低酸素トレーニングは、「強化」だけでなく経営視点でも活用のメリットがある
JリーグやWEリーグのチームで導入が決定しているというダイキン工業の低酸素システムだが、導入することでどんなメリットがあるのか。導入側の視点で紹介してもらった。
高田「例えば、『オーバートレーニング』を防ぐことができます。心肺機能が高まるほどの効果を得ようとすると、どうしても走量が必要になりますが、低酸素システムを活用すれば熱中症も気にせず涼しい環境で、効率の良いトレーニングができるでしょう。選手の身体が壊れづらい。さらに浮いた時間は、技術力を高める練習など、ほかの練習に使うことができます。よって、選手が怪我をしない環境をつくる、競技復帰を早くする、選手の稼働最大化、という経営視点でも活用のメリットがあるシステムです」
また、高田氏はブラインドサッカー男子日本代表ではONE TAP SPORTSをコンディションデータの分析に利用していたため、運動強度管理といったデータを取得・蓄積していくことで、選手の状態や特性を日々確認することができ、データを見ながら練習量をマネージしていたという。
高田「システムを導入するだけではなく、プロトコル、管理システム、この三本柱が揃うことによって、強化の視点でも経営の視点でも費用対効果を考えることができると思います」
※2024年6月8日収録のスポーツパフォーマンスカンファレンス「ONE」スポンサーセッションからサマリーを作成
文/TORCH編集部