鼻血が出る=頭や首がぶつかった。ほかの箇所のケガがないかも確認
鼻が変形していたり、鼻血が出ていると鼻のケガにのみ注目しがちですが、忘れてはいけないのが頭や首のケガです。
鼻以外に痛いところはないか、特に首に痛みがないか、めまいや頭痛などの脳振盪の症状がないかなど、鼻血の処置を行いながら並行して、頭や首のケガを疑うような症状を確認することが大切です。
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かつての方法、実は間違い。鼻血の応急手当て
鼻血の間違った応急手当てとして、「上を向く」「ティッシュを鼻に詰める」という2つの方法があります。
鼻血が出ているときに上を向いたり、横になったりすると血液が喉へ流れ込みやすくなります。血液を飲み込むと気持ちが悪くなったり、嘔吐の原因となったりする場合があります。血液は飲み込まずに吐き出すようにしてください。
スポーツ現場で早く試合や練習に戻るためにティッシュを鼻に詰めるような場面を見ますが、ティッシュを鼻に詰めると血管を傷つけてさらに出血してしまう場合があります。テレビで観るようなスポーツ現場では、ティッシュではなく、柔らかい綿球や鼻血を止血する専用の「鼻血栓」が使われています。できれば専用の鼻血栓が良いですが、ティッシュしかない場合は、押し込むことはせず、出てきた血を拭う程度に止め、小鼻を押さえて止血しましょう。
正しい鼻血の応急手当てとは
スポーツ中に鼻血が出たときには、まずプレーを中止させ、止血するために本人に小鼻を圧迫させます。
多くの鼻血は、「キーゼルバッハ部位」という場所からの出血です。鼻の穴の近くにあり、血管が多く、粘膜層が薄いという特徴があるので出血しやすいと言われています。
小鼻をつまむことによって、この「キーゼルバッハ部位」を圧迫できます。
血液が喉へ流れないように顔をやや下に向けて、小鼻をつまんで圧迫します。もし鼻血がポタポタと落ちるほどの場合には、本人ではなく指導者や保護者などの大人が使い捨て手袋を手にはめてから小鼻をつまんで圧迫します。
顔を下に向けているため、血液はポタポタと下に落ちていきます。ユニフォームや床などに血液が付かないように、ガーゼやティッシュなどを片方の手で持って受け止めます。小鼻をつまんで圧迫しながら、脳振盪を含めた頭や首のケガを疑うような症状がないかを確認するとよいでしょう。
ほとんどの鼻血は圧迫だけで止血することができます。もし鼻の痛みが強い場合や、早く止血したい場合には、アイシングを活用することも有効です。ビニール袋に2つ、3つくらいの氷を入れて、小鼻をつまんで圧迫しながら、その上からアイシングをしてください。
一般的に鼻血は圧迫だけでも長くて10分程度で止血できます。鼻の入り口にあるキーゼルバッハ部位からの出血は静脈からの出血がほとんどのため止血しやすいのですが、さらに奥の動脈から出血している場合には、大量の出血が起こります。その場合、短時間の圧迫で止血は難しいため、出血量が明らかに多い場合にはすぐに医療機関を受診してください。
鼻血を止血することができたら、血液が付いた手や腕などはきれいに洗いましょう。試合や練習に戻る場合には、手や腕などの身体だけでなく、ユニフォームなどの服にも血液が付いていないかを確認して、必要であれば着替えましょう
鼻に変形がある場合
鼻血のときに気をつけなければならないのは、頭や首のケガに加え、鼻骨の骨折です。
鼻をぶつけたことによる鼻血の応急手当てをしているときは、鼻が変形していないかを確認してください。
指導者から見て「変形がない」と思ったときでも、止血してから本人と保護者に鼻が変形していないかを再確認してもらってください。本人に鼻の変形がないかを確認してもらうときには、手鏡があると便利ですが、スマートフォンのカメラ機能でも代用が可能です。
変形がある、つまり鼻骨の骨折の疑いがある場合には、すぐに耳鼻咽喉科や形成外科を受診してください。受診までの間、応急処置としてアイシングすると良いでしょう。ただし、痛みを強める場合があるので圧迫しないように冷やしてください。
鼻骨骨折の整復は、大人であればケガをしてから7〜10日以内に実施されるのが目安になりますが、小児の場合には大人に比べると骨の癒合が早いため、4〜5日以内が目安です。