記事提供:スポーツ安全協会

ケガを予防するためのコンディショニング

冬場はチームや選手が身体づくりのための走り込みやウエイトトレーニングなどに本格的に取り組んでいます。急に高い負荷のトレーニングに励むとケガのリスクが高まります。今回はケガを予防するためのコンディショニングについて、最低限押さえておきたいポイントを解説します。

筆者

筆者
陣内 峻
NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒 米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC) 総合学園ヒューマンアカデミー、学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校、日本健康医療専門学校非常勤講師 都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー 米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター

「外傷」と「障害」の違いを理解しよう

スポーツやトレーニングによって起こるケガは大きく分けて「外傷」と「障害」の2種類あります。ケガ予防のためのコンディショニングを行う場合には、この2種類のケガの違いについて理解しておく必要があります。同じ読み方ですが、傷害保険の「傷害」は「外傷」のことを指します。

まず外傷とは、捻挫や打撲、骨折など1回の外力によって身体の組織が損傷するケガです。外傷はさらに、打撲のように何か物などにぶつかることによって起こるコンタクト型と、方向転換をするときなどに動きをコントロールできずに起こる非コンタクト型の2種類に分類されます。

打撲などのコンタクト型の外傷の予防は、主に防具や競技ルールに関することになるため、選手や指導者が取り組むコンディショニングではなかなか予防のためのアプローチを実施することはできません。

捻挫などの非コンタクト型の外傷予防に関しては、身体の使い方を学んだり、バランス能力を高めたり、ウォーミングアップを工夫したりするなど、コンディショニングに取り組むことで解決できることも多いです。

一方で障害とは、疲労骨折など繰り返しのストレスが加わり続けることによって身体の組織が損傷していくケガです。原因が成長や加齢に伴うものもあります。スポーツにより発症するものは「スポーツ障害」と呼ばれています。障害は外傷とは違い、痛みが徐々に出てくるという特徴があります。徐々に痛みが出てくるため、プレーを継続できることが多く、病院には行かずにさらに悪化させてしまう場合が多くあります。

また、障害は疲労の蓄積が原因のひとつとなるため、試合や練習、トレーニングをした後にはしっかりと身体を回復させるリカバリーが重要になります。今回は「障害」の予防のため、私生活、特に自宅でできる身体のリカバリー方法をご紹介します。

ケガ予防のためのコンディショニング

栄養と睡眠でリカバリー

栄養睡眠リカバリー戦略

健康的な身体をつくるには、「運動」「栄養」「休養」(睡眠)の3つの要素が欠かせません。ケガ予防の観点で言えば、運動に関しては子どもたちの成長の度合い、体力レベル、体調に加えて気温や湿度などの環境条件に合わせた運動時間や運動量、運動内容を調整することが必要です。適切に運動時間や運動量、運動内容を調整しても、運動後の栄養と睡眠が十分でなければしっかりとリカバリーできません。

さらに、成長期の子どもたちにとっては運動からのリカバリーのためだけではなく、成長の糧となるプラスアルファの栄養と睡眠が必要になります。リカバリーと成長のためには栄養と睡眠が最優先事項です。

お風呂でリカバリー

障害の原因となる疲労が蓄積しないように、栄養と食事が重要になりますが、お風呂(湯船に浸かること)も忘れてはいけません。お風呂で身体の中心の体温(深部体温)を上げることによって、その後体温が下がる時に良い入眠が促されることが知られています。

さらに、お風呂の中で軽くマッサージすることによって、運動やスポーツによる疲労を蓄積させず、筋肉をよりリラックスさせることができます。

お風呂の後には静的ストレッチ

お風呂で深部体温を上げて、疲労した筋肉をリラックスさせた後は静的ストレッチで柔軟性を高めましょう。ゆっくりと“痛気持ちいい”程度に、伸ばしたい筋肉の静的ストレッチを行ってください。目安は1カ所の筋肉を30秒以上伸ばすことです。

静的ストレッチ

ポイントは

  1. 痛みを感じるほど強くストレッチしないこと
  2. 息を止めないこと
  3. 身体が冷えないように室温を管理
  4. 身体が冷えないようにマットなどの上で行う
  5. リラックスできるように部屋の照明はちょっと暗くする

呼吸で自律神経を整える

「ケガを予防する」「身体を整える」「心を整える」ためにいつでも取り組めるのが呼吸で自律神経を整えることです。自律神経は呼吸や体温、血圧、消化、代謝などさまざまな体内の機能を私たちの意思とは関係なく調整してくれています。意識的に自律神経を整えられる方法が呼吸です。

ストレスが高まっているときや疲れているときなどは特に、首や肩周りの筋肉が余計に緊張しています。首や肩周りの筋肉をストレッチしてもなかなか筋肉の緊張が改善されないときには自律神経を整えることが効果的です。

逆に言えば、まずは自律神経を整えるために呼吸に目を向けてからストレッチに取り組むと、より良いコンディショニングになります。湯船に浸かっているときなど、何もせずにじっとしているときや、ちょっと時間があるときには、自律神経を整えるために呼吸に目を向ける時間にしてみましょう。

チーム練習の場では指導者が障害予防を心掛けてくれていますが、自らが自宅でのリカバリーに努めることの必要性も認識することが大事です。

 

※当記事は(公財)スポーツ安全協会より記事提供を受けています。