暑さにへこたれない身体をつくる具体的なコンディショニングの方法
無理をしない・させない
体調が悪い時に無理をしない・させない環境づくりは大事です。特に暑い日には、保護者の方は遊びやスポーツに出かける前にお子さんのコンディションが万全かを確認して送り出しましょう。例えば、前日まで発熱や下痢で休んだ子どもが翌日いきなり炎天下での練習や試合にフル参加をすれば、熱中症の発症リスクは高まります。よって体調の悪かった日の翌日以降は、参加前に体温を測定したり、体調が万全であるかを十分に確認したりしてから段階的に参加するようにしましょう。
コンディショニングで大切なのは食事と睡眠です。スポーツ中、特に大会でもない日々の練習中に筋肉のけいれんや熱疲労を起こすユース世代の選手にヒアリングをすると、多くが「昨日あまり寝ていません」、「朝ごはんを食べて来ませんでした」と回答します。食事では栄養だけでなく、水分も豊富に摂れるので、夏場の欠食はマイナスどころか危険とも言えます。
また、スポーツをしていて気分が悪くなった時に、本人が我慢をせずに指導者や周囲に申告できるような環境づくり・雰囲気づくりも安全対策として重要なポイントです。
夏場は体温を上げ過ぎない方法を工夫する
熱中症の予防のために行われる工夫はすべて、体温を上げ過ぎない対策とも言えます。汗が皮膚の表面から蒸発すると気化熱が奪われ、体温が下がります。汗をかいたら水分補給が必要ですし、適宜休憩を入れることでも体温の上昇を防ぐことができます。サッカーのクーリングブレイクがまさにこれです。身体を衣服で覆わなくてはならない競技やポジションの場合は、発汗や放熱の妨げになるので水分補給や休憩をより頻繁に入れると良いでしょう。暑さに身体が慣れないうちは運動量を少なめにし、慣れたところから徐々に運動量を増やしていく暑熱順化の期間をしっかり取ることや、必要なウォーミングアップを効率よく短めに行うことで体温の上がり過ぎを防ぐことができます。
スポーツ前後にセルフでできる脱水チェック法
スポーツを安全に楽しむために子どもから大人まで自分でできるセルフチェックが二つあります。その一つが、体重測定です。運動前と運動後に同じ服装条件で体重を量り、前後の差分を確認する方法です。この差は、スポーツ中に汗でどれくらいの水分を失ったか、すなわちスポーツ中にどれくらいの水分補給が必要なのかを知る目安になります。また、運動後の体重の減りが元の体重の2%以上だと、スポーツパフォーマンスは著しく低下するというデータがあります。例えば、体重50キロの人が練習後の測定で49キロ以下であると、汗で体重の2%を失っているという計算になるので、パフォーマンス維持のためにも運動後に1キロ(=1リットル)の水分補給が必要になります。
もう一つのセルフチェックは、トイレに行った時に尿の色や量を自分で確認することです。水分補給が足りている時の尿は量が多く、薄い黄色をしています。一方で、量が少なく色が濃い場合は脱水のサインです。積極的に水分補給を行いましょう。
ガブ飲みは吸収されない!“こまめな”水分補給と休憩を
子どもは「喉が渇いた」という感覚に気付かないまま、遊びやスポーツに没頭しがちです。パフォーマンスの低下や熱中症は、身体のなかの体温(深部体温)が上昇し過ぎることや脱水で起こりやすくなります。夏場は涼しい場所での休憩で体温の上昇を抑えたり、水分補給を15分から20分おきに入れるようにしましょう。大人はこまめに少しずつ水分を摂ることをトレーニングの一環と捉え自発的にできますが、子どものスポーツでは大人が責任を持って、給水や休憩のタイミングを管理しましょう。
実は、給水のタイミングだけでなく一度に摂る量にも注意が必要です。ヒトの身体が一度に吸収できる水分量はおよそ200ml、コップ約1杯分(成人の場合)といわれます。スポーツ中に水分補給の間隔が空きすぎてしまうと、一度に飲む量が増え、吸収できない水分が胃に溜まった状態で動くことになります。「さっきも飲んだから飲みたくない」という子どもが散見されるあの状況です。こうしたガブ飲みを防ぐためにも、大人がきちんと時間を計り、少しずつ給水させましょう。相当量の真水を 一気に飲むことは低ナトリウム血症という危険な状態を招くことにもつながります。水道水だけでなくスポーツドリンクや麦茶などで汗で失った電解質(ミネラル)を補給することもポイントです。
吸収の観点で言うと、冷たいドリンクのほうが、ぬるいまたは温かいドリンクよりも吸収スピードが速いことが知られています。飲んでみて冷たいと思える5℃から15℃の温度にドリンクをキープできるよう、氷やクーラーバッグ、保冷水筒などをうまく活用しましょう。
涼しい屋内スポーツでも脱水は起こる
空調のない施設での屋内スポーツでの安全対策は屋外スポーツと同様ですが、近年、公立の学校体育館でも空調が設置されるケースが首都圏を中心に増えてきています。空調が効いている体育館や屋内コートなどでは、暑さを感じないため水分補給の量や頻度が少なくなりがちです。しかし、会場に着くまでに炎天下のなか移動してきた場合や、ウォーミングアップだけは屋外で実施しなければならないケースなどでは、身体は既に脱水状態になっている可能性もあります。涼しい屋内だからと油断せず、水分補給に努めましょう。
まとめ
熱中症は、予防が可能といわれます。予防のために、今回は熱中症を起こさない身体づくりのためのコンディショニング方法をご紹介しました。
無理をしない・させない、体温を上げ過ぎない工夫、冷たいドリンクをこまめに摂取する、脱水のサインに気付く、空調の効いた屋内スポーツでも油断をしない。これらの知識を身につけチーム内で共有し順守することで熱中症を予防するだけでなく、パフォーマンスの維持にもつながります。
そして、子どものスポーツに関わる大人の皆さんは、ご自身の水分補給も忘れずに行ってください。季節に捉われず、暑さ指数の高い日は注意しながらスポーツを楽しみましょう。
※当記事は(公財)スポーツ安全協会より記事提供を受けています。