記事提供:スポーツ安全協会

新チーム立ち上がり期に始める「安全」への備え

学年が上がり、新しいチームが立ち上がるときには、さまざまな準備が必要です。今回はそのひとつとして、新チームへの切り替え時期に準備しておきたいスポーツセーフティー(安全管理体制)について、最低限押さえておきたいポイントを解説します。

筆者

筆者
陣内 峻
NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒 米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC) 総合学園ヒューマンアカデミー、学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校、日本健康医療専門学校非常勤講師 都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー 米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター

安全なスポーツ環境は三者でつくる

スポーツセーフティーとは、スポーツを安全に行える環境・体制づくりのことを指し、スポーツに関わる全ての人の協力があって初めて実現します。

スポーツセーフティートライアングル

①選手/家族、②指導者、③施設/競技団体などの三者がお互いに協力し合って安全な環境の構築に努めることが重要です。新チームが立ち上がるときには、新入団員と新入団員の家族が新たにこのトライアングルに加わるため、新入団員と新入団員の家族に、チームにおける安全管理体制について方針や取り組んでいることを理解してもらうとスムーズです。

新しいメンバーだけでなく既存のメンバーに対しても、少なくとも1年に一度はこの機会に、スポーツセーフティーに関する知識をアップデートする機会を設けることも大切です。

スポーツセーフティーのための3つのアクション

スポーツを安全に行える環境を実現するためには3つのアクション(①知る、②備える、③整える)があります。

①知る(ヒト)

スポーツに関わる全ての「人」が安全に対する関心や知識を深めることによって、事故が起こった際に適切な対応を取ることができます。それ以前に、事故を起こさない環境をつくることが可能になります。

②備える(モノ)

AEDや救急キットなど、実際に事故が発生したときに必要な「物」がその場になければ、いくら使い方を知っていても意味がありません。スポーツ現場の安全を守る上で必要な「物」を備えましょう。(参考:救急箱に必要なもの

③整える(体制)

知識を深めて設備や備品を揃えた後は、人と物がしっかりと機能する「体制」づくりが必要になります。最悪の事態を想定した緊急時対応計画(エマージェンシーアクションプラン=EAP)を作ることで、より迅速な救助体制が確立されます。少なくとも年に一度はシミュレーション訓練を行い、計画した通りにEAPが実際に機能するかを検証してください。(参考:EAPを作成しよう

情報を整理するための書類管理

新入団員には自分の健康状態を申告する「健康診断自己申告書」とスポーツやチームの活動へ参加することへの「参加同意書」を提出してもらいましょう。これらの書類には、緊急時の連絡先やこれまでの大きな病気やケガ、アレルギー、服用している薬などを記載してもらい、把握しておきます。

スポーツ活動参加時には参加同意書を提出してもらう緊急事態が起こった際に救急隊員や医療機関に共有した方がよい情報をすぐに取り出せるよう、選手ごとに整理しておくことが大切です。

チームとして管理する書類には、ほかにもケガや事故が起きた際の「外傷・障害報告書」や施設内に不備を発見した際の「施設不備報告書」などがあります。

「外傷・障害報告書」については、どのようなケガを報告書に記入するかを事前に決めておく必要があります。また、シーズン終了後にはこの「外傷・障害報告書」を基にどのようなケガが多く発生したかなどを検証し、予防へとつなげるようにできると良いでしょう。

もしものための備品管理

備品管理の目的は、安全管理体制に必要な備品を揃え、常に使える状態にしておくことです。チームとして用意するものと、選手個人が用意するものに分けて考え、選手個人で用意するものは選手によって異なる場合があるので、新入団員と新入団員の家族に説明することを忘れないようにしましょう。

また、施設や競技団体、大会主催者などが用意する安全管理体制に必要な備品については、会場ごとに練習や試合をする前に位置や使い方を確認するようにしてください。

チームメートの安全を互いに守る教育・啓発

スポーツ現場にとって最善の安全管理体制を構築するためには、安全に関する最新の情報を更新し、チームに関わる人へ共有し続けるような教育・啓発活動が必要になります。

選手の一番そばにいるのはほかの選手、またはマネージャーです。頭のケガなどの症状は受傷してすぐに現れるとは限りません。スポーツセーフティーに関する知識を選手やマネージャーなどが身につけることによって、チームメートの異変にいち早く気付き、指導者や家族など近くにいる大人に助けを求めることが可能になります。

さらには、チーム全員がスポーツセーフティーに関する知識を学ぶことにより、体調が悪いときなどに自己申告しやすい環境を確保することができます。

受傷直後のスポーツ現場では症状が現れず、帰宅してから症状が出てくる場合もあります。特に選手が未成年の場合には、選手と同様に家族の方にも安全に関する最新の情報を更新してもらい、一緒に安全について取り組んでもらいましょう。

 

※当記事は(公財)スポーツ安全協会より記事提供を受けています。