低体温症の重症度は大きく分けて3つ
低体温症とは、身体の中心の温度(深部体温)が35℃まで下がった状態です。冬季のランニングトレーニングやサッカーの試合でベンチにいるときなどが起こりやすい状況です。低体温症を疑った場合には、寒い環境から隔離し、濡れている衣服の除去や水滴などの拭き取りをまず行います。
低体温症は、症状によって3つの重症度に分かれ、それぞれ対応方法も異なりますので、大まかにどんな症状が現れるか・どのように対処するかをまとめてみました。

低体温症の3つの重症度とその対策(まとめ)の早見表。低体温症の中等度と重度は緊急事態
低体温症は本人も周囲も気付きにくいのが特徴です。深部体温は、通常の体温計で脇の下や額などで測定することはできません。特に大人より子どものほうが低体温症になりやすいので、周りにいる大人は子どもたちの活動中の様子をよく観察しましょう。
スポーツ現場でできる低体温症のチェックの方法は、震えと意識の確認です。寒いところでスポーツをしているときに身体の震えが始まったら、軽度の低体温症を疑い、適切な対応をして、中等度以上にならないよう継続的に観察します。
身体の震えが始まっても、軽度の低体温症だと軽視し、そのままスポーツを継続させると、中等度以上の低体温症に発展する恐れがあります。身体の震えは体温低下の警告サインだと認識することが重要です。また、身体の震えだけでなく、意識がはっきりしているかも確認します。
身体の震えが始まったら?
身体の震えが始まったら体温が下がらないようにするために寒さから隔離する必要があります。冷たいものとの接触を避けるため、地面にダンボールなどの敷物を敷いたり、風を除けるために建物や車内に移動させたりします。着替えがなくても、濡れた衣服は取り除き、毛布などにくるんで冷たいものに接触させないようにすることが重要です。
低体温症の疑いがあるときなどに体温を逃さないようにするためのアルミ保温シートというものもあります。エマージェンシーシートやサバイバルシート、レスキューシートとも呼ばれ、寒さの中でスポーツをする際には救急箱に入れておくことをオススメします。
寒さからの隔離の次にすることが身体を温めることです。熱は顔や頭、首から逃げやすいので、帽子やマフラーなどで覆い、なるべく厚着をするようにしてください。寒さから隔離し、厚着をしたら、体温を上げるためのエネルギー補給と水分補給を忘れないようにしましょう。
体温が下がると利尿作用が働き脱水になる恐れがあるので、水分を摂るようにしてください。水分補給には、直接体温を上げる作用はありませんが、水分は身体の機能が正常に働く上で必須です。
身体の震えが始まり、適切に対応をしても深部体温が下がり続けることがありますので、状況が良くならなかったり悪化したりしている場合は緊急事態と判断し、救急車を呼ぶか、医療機関へ搬送してください。このようなケースでは対応を続けながらAEDを調達し、心停止の疑いがある場合にはAEDを使用します。
スポーツ現場での低体温症への対策
スポーツ現場での低体温症への対策は、起きたあとの対応だけではありません。低体温症を起こさないようにするための予防と、起きてしまったときに適切かつ迅速に対応するための準備が含まれます。
低体温症の予防には、症状について知る教育と服装・防寒具があります。寒さの中で身体が震えていたら体温が下がり始めた警告サインであることを、スポーツに関わる大人だけでなく、子どもにも教育する必要があります。服装や防寒具に関しては、雨や汗などで濡れたスポーツウェアが体温を奪う原因となることを認識し、必ず着替えを準備します。
また、ある程度身体を動かして温まったあとでも、試合のハーフタイムなどにはしっかりと防寒具を着て、身体が冷えないようにさせてください。試合中に指導者は、出場している選手や試合の状況などに注力しがちですが、ベンチに控えている選手の体調にも目を向ける必要があります。
低体温症に対して適切かつ迅速に対応するための準備には、低体温時にも対応できるEAP (エマージェンシーアクションプラン=緊急時対応計画)の用意が含まれます。
- 低体温症の疑いがあるときに必要なモノはどこにあるか
- どのようにして寒さから隔離させるか
- どのように身体を温めるか
上記のことをEAPにしっかり盛り込んでおきましょう。
※当記事は(公財)スポーツ安全協会より記事提供を受けています。