記事提供:スポーツ安全協会

「休む」が「強さ」になる! 成長期のための積極的リカバリー

近年「リカバリー(疲労回復)」という言葉が注目され、スポーツ界でも重要なキーワードになっています。リカバリーは単なる休息ではなく、強くなるためのトレーニングの一部とも言われています。今回は、スポーツを楽しむ成長期の子どもにとって欠かせない疲労回復=リカバリーの3つの要素である睡眠と栄養とストレッチについて解説します。

筆者

筆者
八田 倫子
NPO法人スポーツセーフティージャパン副代表

オレゴン州立大学ヘルス&ヒューマンパフォーマンス学部卒 米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC) 帝京平成大学人文社会学部非常勤講師 雙葉中学校・高等学校バスケットボール部トレーナー 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー

成長の鍵を握る睡眠と成長ホルモンの関係性

成長期の子どもにとって、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、疲労回復、つまり組織の修復や骨の成長に欠かせません。成長ホルモンの分泌を促す鍵は睡眠・食事・運動にあります。特に成長ホルモンの70〜80%は睡眠中に分泌されると言われ、質の高い睡眠と十分な時間の確保は疲労回復に直結します。

成長期の睡眠の重要性

 成長ホルモンの分泌は、入眠後3時間程度に起こる深い眠りである「ノンレム睡眠」中にピークを迎えます。ノンレム睡眠が短かったり中断されたりすると、最大限の成長ホルモンの分泌やリカバリー効果が得られなくなります。疲れてリビングで寝てしまい、途中で起こして寝室に移動させるような状況は避け、最初から落ち着いた環境で眠れるよう促しましょう。

また、長時間の昼寝は夜の睡眠に悪影響を及ぼします。昼寝は30分程度にするなど、コントロールが重要です。タブレットやスマートフォンなどのブルーライトは脳を覚醒させ、睡眠の質を低下させます。就寝前のデバイスの使用は控える習慣をつくりましょう。

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運動後には、なるべく早い栄養補給を

成長期の子どもの食事では、運動で消費した分のエネルギーだけでなく、身体を成長させるための栄養も必要です。子どもの身体は大人より小さいですが、必要な栄養素の量は大きく変わらないと言われています。

成長期の積極的リカバリー

特に重要なのは運動後早めに栄養補給することです。運動後 30〜45分以内 は筋肉が最も効率よく栄養を吸収する「ゴールデンタイム」。この時間帯に 糖質+たんぱく質を摂ることで、筋肉の合成や回復が促進され、疲労回復もスムーズになります。肉や魚などのタンパク質を含む具材のおにぎりや卵サンドイッチなどが手軽に食べやすくおすすめです。

また、汗と共に失われた電解質の補給も重要です。糖質やたんぱく質と合わせて電解質もしっかり補給することで、より効果的なリカバリーにつながります。

骨の成長期には、ストレッチで筋肉の柔軟性をキープ

スポーツをする成長期の子どもの身体は、大人のアスリート以上にストレスを受ける場合があります。それは、練習やトレーニングによる負荷に、急激に成長する骨や筋肉の変化という生理的ストレスが加わるためです。

子どもの骨と大人の骨の違い

特に、身長が急速に伸びる時期は骨の成長スピードに筋肉の長さが追いつかないというミスマッチが起こります。骨は「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる部分から伸びますが、骨端線に付着した筋肉は常に引っ張られる状態になり、結果として筋肉が硬くなりやすいのです。

 成長期の柔軟性や可動域の低下を最小限におさえるには、運動後や入浴後など 身体が温まったタイミングでのストレッチが効果的です。「痛気持ちいい」と感じる程度の強さで、競技で最もよく使う部位など、1つの部位30秒ほどを目安にストレッチを継続しましょう。

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完全休養日を必ずつくる

リカバリー(疲労回復)には、しっかり休む時間を確保することも欠かせません。週に最低1日、できれば2日は競技から離れ、身体を休める日を設けましょう。これは「サボる」ということではなく、疲労を抜いてパフォーマンスを高めるための重要な戦略です。特に、同じ競技で部活動と外部クラブなどを掛け持ちし、休養日が確保できていないケースでは注意が必要です。

休養日の設定は、子どもの様子をよく観察しながら、保護者や指導者が調整してあげましょう。回復力には個人差があり、競技レベルによって運動量も異なるからです。まずは、「2〜3日運動したら1日休む」というリズムを目安に、連続して負荷がかかりすぎないよう意識してみてください。

また、同じ筋肉ばかりを使い続けるのではなく、クロストレーニングといって異なる種類のスポーツを取り入れたり、軽い有酸素運動を行ったりすることは、リカバリー効果が高い「アクティブレスト(積極的休養)」とも言われており最適です。完全な安静でなくても、同じ動作だけを繰り返さないことはケガの予防にもつながります。

まとめ

成長期特有の痛みの予防やパフォーマンス向上のためには、子どものうちから積極的なリカバリーを習慣化することが重要です。質の高い睡眠、適切な栄養補給、そして柔軟性を保つストレッチを組み合わせることで、子どもたちが安全にスポーツを楽しみながら成長できる環境を整えていきましょう。