記事提供:スポーツ安全協会

夏を安全に楽しむ! 水辺の事故を防ぐ「ウォーターセーフティー」の基本

プールや海、川、湖など水辺の遊びは子どもたちにとって夏の楽しみのひとつです。レクリエーションや合宿などで訪れることもあるでしょう。避暑という観点では、熱中症予防のひとつとしても活用されています。ただし、注意しなければいけないのが溺れてしまう「水の事故」です。 今回は海や川などの自然水域での水の事故(溺水)における万が一の場合の対応について紹介します。

筆者

筆者
陣内 峻
NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒 米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC) 総合学園ヒューマンアカデミー、日本健康医療専門学校、横浜スポーツ&医療ウェルネス専門学校非常勤講師 都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー 米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター

水の事故の危険性

溺れるというと、大きな声で「助けて〜」と叫びながらバシャバシャと音を立てる子どもをイメージしがちですが、溺れている子どもが常に助けを求めることができるとは限りません。

子どもは静かに溺れてしまうケースがあるので、目を離さないようにすることが大切です。よって、泳ぐ場合には2人1組でペアになる「バディシステム」を組んでください。水の中で溺れないようにするためには浮力の確保がとても重要になるので、ライフジャケットを着用させましょう。

また、水遊びは体力を使うため、十分な休憩時間をとることも重要です。定期的に休憩を促し、同時に人数チェックを行ってください。

海の安全対策

海での安全対策で重要になるのが、ライフセーバーなどの監視員がいる海水浴場で、かつ指定された遊泳エリア内で泳ぐことです。海の救助要請は、海水浴場にいるライフセーバーなどの監視員だけでなく、海上保安庁に通報する必要があるので、「118番通報」も念頭に入れておきましょう。

ブイやいかだの下をくぐることや潜水を禁止するなどのルールづくりも事故を予防するためには大切です。

川遊びの安全対策

川は、雨が降ると流れや地形が変わってしまうため、同じ場所での毎年恒例の川遊びであっても油断はできません。一見緩やかに見える場合でも、地形などの影響で川の流れは一定ではありませんし、急に深くなっている場合もあります。

また、上流部にダムがある川で遊ぶ際には、放水されることがあるので、川遊びする場所だけでなく、上流部の天気やダムの放流情報を確認し、サイレンが鳴ったら迷わずすぐに離れましょう。

活動エリアを決めるときには、必ず下流部に水深が浅い場所があるかを確認してください。

Supervise children from downstream

子どもを見守る大人は必ず下流側に立ちます。上流側に立っていると、いざというときの救助に間に合わなかったり、無理に救助しようとして溺れて二次災害を引き起こしたりする可能性が高くなります。

二次災害にならないように必要なのが、水中から引き上げるためのスローロープ(投げ縄)です。大人が立っている下流側へ流された子どもがちょうど流れてくる場合であればいいのですが、立っている場所から陸の反対側に流されてしまう場合には、スローロープが必要になります。

A throw rope prepared alongside children playing in the water

海水浴場では、ライフセーバーなどの監視員がいて、AEDが設置されていますが、川遊びの場合には自ら準備しなければならないため、必ず最寄りのAEDの場所を確認する必要があります。

万が一溺れた人を見つけたら

緊急事態が起こったときに適切かつ迅速に救急対応を実施するためにEAP(エマージェンシーアクションプラン)を事前に作成する必要があります。特に日頃の活動場所と異なるレジャーでは、近隣の医療機関の場所・連絡先や、AEDの場所などを把握しておかないと、緊急時に適切な対応がより困難となります。水辺での遊びに合わせて、AEDだけでなくスローロープを加えたり、ライフセーバーなどの監視員の配置場所、海上保安庁への通報番号である「118番通報」などを記載したEAPを作成して持参しましょう。

EAPは突然心停止や溺水など一つ一つの緊急時への対応を細かく記述するものではありません。緊急事態ひとつずつにおける救急対応の手順を記載するのは安全マニュアルです。

以下の記事も参考に、ご覧ください。

EAPを作成し、救護体制の準備を万全に!

安全マニュアルを作成しよう!

水遊びを実施することが多い場合、安全マニュアルには、万が一溺れた人を見つけたときの救急対応の手順も記載しておくと良いでしょう。もし溺れた人を見つけたら、二次災害にならないようにまずは自分自身の安全を第一に考えて行動することが大切です。残念なことに、海や川などの自然水域での溺水事故では、助けに行った方も亡くなったというニュースが多くあります。

川や海に入らずに陸からスローロープを投げて水中から引き上げたり、ライフセーバーや海上保安庁などに助けを求めたりして、救命の連鎖をつなげることが重要です。救助によって水中から引き上げたら、安全な場所に寝かせます。大きな声で呼びかけ、反応を見ます。

反応がない場合には、すぐに救急車を呼び、呼吸を確認します。10秒以内で呼吸を確認し、普段通りの呼吸でなければAEDを持ってくるように頼み、すぐに心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)をします。

溺水では呼吸ができずに低酸素の状態で心停止に陥っていることが多いため、肺から酸素を送り込む人工呼吸が重要となります。

118番や119番通報をすることによって傷病者や事故発生場所などの情報を伝えるだけでなく、通信司令員や救急隊員からもらった救命の指示に従うことによって、より適切な対応をすることができます。もし、水を吐いた場合には、顔を横に向け水を口から出すようにしてください。

AEDが現場に到着したら、すぐにAEDの電源を入れて音声ガイダンスの指示に従ってください。AED装着時の注意点として、パッドを貼る部分やその周辺部位の水分はタオルなどでふき取っておきます。水分をふき取らないと電流が体表に流れ、心臓までじゅうぶんに届かない危険性があります。

救急隊員に引き継ぐまでは、傷病者の意識や呼吸が戻ってもパッドは貼ったままにして、AEDが心電図を解析できるようにしておいてください。