求められるスポーツセーフティーアクション
スポーツを安全に行える環境を実現するためには、3つのアクションである「知る、備える、整える」があります。指導者が安全配慮・注意義務を果たすために救急対応や応急手当の知識を学び、実践できるような研修を受講することが求められますが、選手自身や保護者も体調管理や食事などに関する知識を学び、実践することも大切です。保護者が子どもだった頃のすり傷や鼻血の応急手当、脳振盪に関する知識は特に、古くなっている可能性があるので、指導者だけでなく、保護者もスポーツ医科学の知識はアップデートしましょう。
スポーツに関わる人が安全に関する知識を身につけ、AEDなどの救命具や応急手当に必要な救急バッグの中身を備えた上で、事故が起こったときに適切かつ安全に対応できる救護体制を整えましょう。救護体制を整える上で必要になるのが、エマージェンシーアクションプラン(EAP:緊急時対応計画)です。
暴力・ハラスメントへの取り組み
暴力やハラスメント行為はいかなる理由であっても正当化されることはありません。指導者が選手に対する行為だけでなく、選手同士で行われることも含めて防止する必要があります。特に、子どもに対する指導では、子どもの健全な精神的発達に重大な影響を及ぼす恐れが指摘されています。
日本スポーツ協会のスポーツにおける暴力やハラスメントなどの相談窓口に寄せられた暴力・ハラスメント行為の被害者からの相談件数のうち、2024年度は、約半数が小学生で、中学生と高校生を含めると被害者全体の約8割を占めていると報告されています。
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単純にハラスメントと言ってもパワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどスポーツ現場にて想定されるハラスメントは複数あります。ハラスメントと認定される要件はその種類によって異なっており、それぞれ別物と考える必要があります。指導者は各種研修を通じて不適切な指導を行わないための知識が必要となってきます。
また、暴力やパワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどのハラスメントに関する指導者への教育だけでなく、暴力・ハラスメント事案が発生したときの被害者や報告者の保護などの体制を整えることも大切です。また、子どもを性犯罪・性暴力から守るために、こども性暴力防止法が2024年(令和6年)6月に成立し、2026年(令和8年)の12月末に施行される予定です。
保険への加入
事前の予防策を徹底しても、ケガや事故の発生をゼロにすることはできません。万が一の発生に備え、治療費や慰謝料などの資金を手当てしておくことを、「リスクファイナンシング」といいます。その代表的な手段が、損害保険への加入です。
チーム運営に関わる損害保険には、大きく分けて賠償責任保険と傷害保険の2種類があります。
賠償責任保険は、他人にケガをさせたり、他人の財物を損壊した場合の「法律上の」損害賠償責任を補償する保険です。例えばケガの原因が指導者の監督不足や指導誤りにより、指導者が損害賠償責任を負った場合、指導者が指導中の事故を補償する賠償責任保険に加入をしていれば補償を受けることができます。
一方、傷害保険は、選手がケガをした際に、通院1回あたり、または入院1日ごとに、約款で定められた定額が支払われる保険です。スポーツ活動における事故では、誰の責任でもなくスポーツに内在する危険により発生するものがほとんどです。傷害保険は選手などの被保険者自身が傷害を負ったことをもって補償を受けることができます。
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なお、保険に加入せずクラブや指導者の自己資金で対応することを「リスクの保有」といいますが、損害賠償額が大きくなった場合に必要な資金を全て賄えないこともあり、現実的な選択肢とは言えません。
多くのチーム、クラブで選手、指導者が加入しているスポーツ安全保険は、賠償責任保険、傷害保険がセットとなっているため、万が一の事故に備え加入しておくことをお勧めします。
安全マニュアルの作成
安全マニュアルとは、事前の体制づくりと事故後の対応を書面化したものです。書面化して安全マニュアルを作成することで、対応の抜け漏れがないようにすることができます。また、EAPは心肺停止や頭や首のケガ、熱射病、落雷事故などひとつずつのケースに対する救急対応をまとめたマニュアルではありません。ひとつずつのケースに対する救急対応の手順は、安全マニュアルに記載しましょう。
事故が起きないようにすることも大切ですが、スポーツ中の事故をゼロにすることは難しく、事故発生時に適切な対応を行うことも指導者や運営側に求められていることを強く認識しておきましょう。
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