記事提供:スポーツ安全協会

子どもの出場機会を最大化する「リーグ方式」のススメ

日本のスポーツ大会の多くは、勝ち上がっていくことが前提となるトーナメント方式です。「負けたら終わり」という緊張感がある一方で、リーグ方式には「試合数が担保される」という大きな特徴があります。 それぞれにメリットとデメリットがあり、大会形式によって戦い方や練習計画、子どもが得られる経験も変わってきます。 今回は両方式の特徴を詳しく解説します。現状の課題を解決する選択肢として、チームや所属団体でリーグ方式を取り入れてみるのはいかがでしょうか。

筆者

筆者
陣内 峻
NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒 米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC) 総合学園ヒューマンアカデミー、日本健康医療専門学校、横浜スポーツ&医療ウェルネス専門学校非常勤講師 都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー 米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター

「トーナメント方式」のメリットとデメリット

トーナメント方式のメリットとしては、団結力が高まること、盛り上がりがあること、期間が短い(試合数が少ない)こと、ジャイアントキリング(圧倒的に強い相手〈ジャイアント=巨人〉を破ること。「番狂わせ」ともいう)が起こり得ることなどが挙げられます。

トーナメント方式の大きな特徴は、なんといっても「負けたら終わり」という点です。よって、1試合の重みが極めて大きく、試合に出場する選手が固定化されやすいため、子どもたちの間で出場機会の差が大きくなります。

また、トーナメント戦の多くは短期的に行われ、試合に勝ち進んでいくとレギュラー選手の負担が大きくなり、ケガのリスクが高まります。野球の場合には、球数が増えていてもエースが投げ続けてしまい、肩や肘、腰のケガのリスクが高くなるため、こうしたリスクを軽減させるために「球数制限」のルールが導入されています。

子どもの出場機会を最大化するのはリーグかトーナメントか「負けたら終わり」「勝ち進んでいくことによる負担の大きさ」というトーナメント方式の課題によって、指導者が立てる練習計画「ピリオダイゼーション」がとても難しくなります。

ピリオダイゼーションでは一般的に、準備期、試合期、移行期という少なくとも3つの期に分けられます。準備期は、基礎体力や筋力、持久力などの競技に必要な土台づくりの時期であり、練習がメインとなる期間です。

試合期は、シーズン中であり、試合で最高のパフォーマンスを発揮することが目的となる期間になります。

移行期(休息期)は、試合期での身体的・精神的な疲労を回復させ、次の準備期または試合期に移行する準備期間です。

トーナメント方式の場合には、大会の期間中ずっとピークを維持する、もしくは強豪校であれば、トーナメントの後半にピーキング するなど、チームの状況に合わせて戦略を立てる必要があります。さらに難しくなるのが、全国大会です。各都道府県の予選があり、少しの期間が空いて、全国大会が開催されるスケジュールがほとんどです。

全国大会の場合には、各都道府県の予選の時期に1回目の試合期があり、全国大会が2回目の試合期になります。全国大会の常連チームであれば、1年間の計画の中で試合期が2回あるというピリオダイゼーションを計画して準備できます。一方で、全国大会に進出する可能性が高くないチームの場合には、まずは予選大会の決勝までの準備をし、予選大会で勝ち進むにつれて、少しずつ全国大会をイメージして準備をしていくことになります。そのため、あらかじめ年間を通じたピリオダイゼーションを組むことが難しいのです。

「リーグ方式」のメリットとデメリット

 リーグ方式では、試合の相手や試合数は事前に決まっているため、ピリオダイゼーションにおける試合期の期間が変わることはありません。そのため、練習やピーキングの計画は立てやすいでしょう。もちろん、天候などによってスケジュール変更があることは考えられますが、それはトーナメント方式でも同様です。 

さらに、成績や対戦相手によっては、レギュラー選手を休ませ、控え選手を抜擢して子どもたちの出場機会を最大化できる点は大きなメリットです。ベンチにいるレギュラー選手は、試合に出ている控え選手をどのようにサポートすればいいプレーができるかを考え行動することが、チーム力を高めるだけでなく、個々の成長にもつながります。

敗戦からの切り替え機会が得られるのもリーグ形式ならではメンタル面での成長という観点でも、リーグ方式には特徴があります。リーグ方式では勝率や勝利数、得失点差などの比較によって優劣が決まるため、ある意味「負けることが許される」という側面があります。

トーナメント方式では、敗者同士で戦う3位決定戦が唯一「負けた後に戦う試合」ですが、準決勝での敗戦直後であり精神的に非常に難しい試合でもあります。

それに対して、リーグ方式では、全勝以外のチームは必ず「試合に負けてから、次の試合にどう気持ちを切り替えて臨むか」を日常的に経験することになります。「負けた試合から何を学び、どう次の試合に活かすか」を繰り返すことは、スポーツだけでなく、子どもたちが今後生きていく上での大事なスキル(ライフスキル)のひとつになり得るでしょう。

一方で、デメリットとしては、トーナメント方式とは逆に、試合数が多く大会期間が長いこと、それに伴い人的・経済的コストがかかることなどが挙げられます。

リーグ方式なら、保護者の都合も合わせやすい

リーグ方式によって全てのチームに試合数を確保することは、試合会場に来て応援する保護者が抱える課題も解消してくれます。

「負けたら終わり」というトーナメント方式の場合には、時間を作って試合に応援に行く保護者にとっては、全ての試合に予定を合わせて応援に行くのは大変です。また、なかなか予定を合わせることが難しい保護者にとっては、1回戦や2回戦で敗退してしまい、観戦機会が少ないという方もいるでしょう。

リーグ方式であれば、試合数が確保されているため、1つの試合を見に行けなかったとしても、それほど心の負担にはなりません。スケジュールの調整が難しい保護者の方でもリーグ方式の場合には予定を組みやすくなります。

それぞれの良さが、子どもの成長につながる

今回の記事では、リーグ方式のメリットとデメリット、トーナメント方式のメリットとデメリットをそれぞれ紹介しましたが、決して「どちらかが間違っていて、どちらかが正しい」ということではありません。私がサポートしている中学校のサッカー部では、リーグ方式の大会にもトーナメント方式の大会にも出場しています。

「負けたら終わり」のトーナメント方式の大会で子どもたちは負けるプレッシャーが大きい分、勝った時の喜びは大きいように感じています。また、リーグ方式の大会では、なるべくみんなが出場機会を確保できるように試合での得失点差を大きくしたり、対戦相手の勝敗を確認したりするなど、みんなで戦略を立てています。

トーナメント方式とリーグ方式の両方の大会があることで、子どもたちはさまざまな成長の機会を得ることができます。