アナログ管理からIT管理へ。過去の情報にアクセスしやすく、チームの全体像が把握できるように
倉敷翠松高校女子バスケットボール部の構成について教えてください。
- 選手人数/19名(1年生8名、2年生4名、3年生7名)
- チームスタッフ構成/監督、アシスタントコーチ、トレーナー、学生マネージャー 5名
ONE TAP SPORTS導入の経緯は?
白石監督: 2021年10月にONE TAP SPORTSを導入する前は、学年別に1枚の紙を準備して、朝練前に選手にコンディションを記入してもらって一覧で見られるようにしていました。記入項目は、体重、疲労度、怪我、メンタル、月経。くわえて、どの選手が離脱しているのか、調整メニューが必要なのかという怪我の状態も、選手自身に記録してもらうようにしていました。特に、怪我の復帰からすぐに通常の練習メニューに入ると、また怪我をしてしまう恐れがあるので、離脱中・調整中の選手の欄は、マーカーで色分けするなど見落とさないように気を付けていました。
野瀬選手:毎朝、記録を書き込むこと自体はそれほど苦ではありませんでした。でも、紙に書くということがルーティン化していなかったので、記入を忘れてしまうこともありました。
マネージャー村上さん:朝練開始前に記入の有無を確認して、未記入の選手には声をかけて記入漏れがないようにしていました。毎回声をかけて回るのは少し大変でした。
白石監督:紙での管理のときには、過去の怪我の履歴を探すために何枚もの紙をさかのぼらなければなりませんでした。もちろん、いつどんな怪我があったか、だいたい記憶に残っているので探すことはできますが、どうしても多少の時間がかかってしまいます。それに痛みが強くなっているかどうかも、パッと見ただけでは分かりにくい。つまり、選手それぞれの全体像を把握し、分析するのは困難な状況でした。
もともとアプリには興味があり、映像分析やコンディショニングなど、テクノロジーをうまく活用したいと思っていました。そんなときにタイミングよく、ONE TAP SPORTSの担当者から連絡をいただきました。デモ画面を見ながら説明を受けると、選手のコンディショニングが可視化されるのはもちろん、選手一人ひとりが自分の身体と向き合う機会が増え、意識も変わるのではないかと期待できました。
これまでにも、私から選手に「いいパフォーマンスを出すためには食事や睡眠、休養、身体づくりなど、さまざまな要素が影響するよ」という話をしていましたので。また、アプリでデータを集めて、それを見ながら話をすることで、より説得力が増して、選手にコンディショニングの大切さを実感してもらえるのではないかというのも導入を決めた理由です。
野瀬選手:実際、ONE TAP SPORTSを使い始めてから、自分のコンディションが可視化されたおかげで体調管理がしやすくなりました。
ONE TAP SPORTSの項目の中で特に重視しているものはありますか。
白石監督:もちろん全項目にくまなく目を通すのですが、特に気になるのは「精神面」です。私たちのチームでは「精神的はつらつ度」という項目にしており、そこを一番にチェックします。技術が伸び悩んだり、チームメートとのコミュニケーションの悩みがあったりすると、落ち込む選手もいます。かつ、「精神的はつらつ度」が下がっている場合には、プレーにも影響します。数値が下がっているときは、監督である私、もしくはマネージャーなどに声をかけてもらって、どうして落ち込んでいるのかなど、話を聞くようにしています。
「しっかり休むことで怪我を防ぐ」ことが浸透し、不調を申告できる雰囲気に。月経痛がある選手には休養を促すことも
怪我予防に、ONE TAP SPORTSをどのように役立てていますか?
白石監督:以前は痛みがあっても言い出せない選手もいたようです。バスケットボールはチーム競技なので、一人が抜けるとチーム全体のプレーに影響します。それにライバルがいてポジション争いをしていることも多く、心理的になかなか休めないという側面があるのです。しかしONE TAP SPORTSを導入後、必要なときには休むことがコンディション維持・向上につながるんだということが、随分とチームに浸透してきたように感じています。今では、一番言い出しにくいであろう1年生も痛みを申告してくれるようになりました。私からも、「しっかり休んで疲労をとることで怪我が防げるんだよ」と選手へは重ねて伝えるようにしています。
月経管理はどのように指導していますか?
白石監督:ONE TAP SPORTSでは、月経開始日だけでなく頭痛はもちろん、腹痛、月経痛のように、いくつか項目を分けて入力してもらうようにしています。ですから正確に体調を把握できるので助かっています。以前は月経だからと練習を休む選手はほぼいませんでしたが、先日、ONE TAP SPORTSが主催するオンラインセミナーに参加したとき、 月経でも程度によっては怪我や体調不良と同じ扱いにした方がいいという話を聞きました。その話を聞いたこともあり、月経痛が強い選手には休養を促すようになりました。
1カ月の活動休止があっても、データを活用し運動負荷をコントロール。怪我をゼロに抑えた
新型コロナウイルス感染症の影響で活動ができなかった期間があったと伺いました。
白石監督:今年初頭、コロナの影響で、1カ月間活動を休まざるを得ない状況になり、しかも、自粛明け2週間後には大会がある。その時は練習再開後に怪我をしないか心配でしょうがなかったです。実際、ひやりとするシーンが何度もありました。再開後、怪我をしないようにONE TAP SPORTSでコンディションと運動負荷をコントロールし、怪我なく乗り切ることができました。
選手として使ってみていかがですか。
野瀬選手:これまで怪我をしたら、どうして怪我をしたのか原因が分からないことが多かったんです。でもONE TAP SPORTSを活用するようになってから、怪我の傾向が分かり、怪我をなるべくしないようにと、構え方やウエイトのかけ方を変えるなど工夫するようになりました。最近ではたとえ怪我をしたとしても、回復するまでの時間が短くなったと思います。
マネージャーとして使ってみていかがですか。
村上さん:使う前は具体的にどういうツールなのかが分かりませんでした。ただ今よりも過去の怪我の履歴や傾向などの細かな分析ができるのではと期待していました。利用するようになってから、数字で痛みを入力するようになると、ひどい怪我でなくても、ちゃんと痛みについて入力してくれる選手が増えました。そのおかげで、練習をやり過ぎる前に選手の様子を見て、休むように声かけができるようになりました。
コンディショニングに対する意識は変わりましたか。
野瀬選手:特に睡眠は7時間~7時間半だと状態がいいのに対して、7時間以下もしくは9時間以上だと状態が悪くなる傾向があることが分かりました。このように睡眠も可視化されることでちゃんと意識するようになりました。それにお風呂でマッサージなどのケアをすると、朝練でコンディションが違うというのも分かるようになりました。ケアをした翌朝は、「走れるな」とか「足が軽いな」という感覚があるのでケアに対する意識も変わりました。
導入後、選手とのコミュニケーションに変化はありましたか?
白石監督:ONE TAP SPORTSを活用するようになってからアプリを見つつ、強度について選手に方針を説明できるようになったので助かっています。怪我をしそうな選手には、負荷が大きくなり過ぎないよう練習に制限をかけることもあります。そんな選手には「本当は追い込んでほしいけれど、怪我をしてしまって出場できなければ意味がなくなってしまう」と数字を見せながら意味づけして伝えるようにしています。
指導法に変化はありますか。
白石監督:指導への意識はそれほど変化していないかもしれません。選手についての情報は圧倒的に増えましたので、いちいち状態を聞くことなく、選手の最新の状態を知ることができ、指導にも役立てられていると実感しています。近々、大きな大会が2つあるので(※取材実施日は2022年11月末)、ギリギリまで強度を高めてトレーニングし、選手全員が最高の状態で試合に臨んで、結果を出せるように導いていきたいです。
取材・文/松葉紀子(スパイラルワークス) 写真提供/倉敷翠松高校女子バスケットボール部