明治国際医療大学 アスリートサポートセンター|怪我をした選手の傷害履歴を蓄積。学生トレーナーの実習にも活用

鍼灸、柔道整復、看護、救急救命など東西両医学を幅広く学べる明治国際医療大学では、学生アスリートのコンディション管理と学生トレーナーの育成、両面でONE TAP SPORTSが活用されている。学内に設置された「アスリートサポートセンター」を中心に、同大学の学生トレーナーが学生アスリートたちのケアやコンディショニング、トレーニング指導などを行っている。スポーツ医療分野の専門家を目指す学生も多いという同大学。新年度からはONE TAP SPORTSを用いたデータ活用の授業も開講されるそうだ。それらの推進役を担う谷口氏に話を伺った。

インタビュイー

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谷口 剛志
明治国際医療大学 鍼灸学部 はりきゅう学講座 講師

1975年生まれ、京都市出身。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科卒。鍼灸学士/スポーツ健康科学修士。2015〜18年ポルトガルのプロサッカーチーム・SLベンフィカにてトレーナーを務めた経験を生かし、教員と並行して明治国際医療大学メディカルアスレティックトレーナーコースのコーディネーターに就任。プライベートでは、NPO の代表も務め、ヘルスプロモーションやwell-being プロジェクトを手掛ける。

医療を学ぶ学生アスリートが「セルフコンディショニング」できることを目標に導入

明治国際医療大学「アスリートサポートセンター」設置の目的を教えてください。

谷口 剛志氏 明治国際医療大学 鍼灸学部 はりきゅう学講座 講師

谷口さん:大学の強化指定クラブに所属する学生アスリートのケアやコンディショニング、メディカルサポートなどを行うため2016年に設置されました。本学では、東洋医学と西洋医学を融合した教育を行っており、学内の付属病院、付属鍼灸センターなどを備えています。それらの医療スタッフ、トレーナー、教員、指導者が連携して、学生アスリートの「予防・治療・リハビリ・復帰」を一貫してサポートしています。

例えば、怪我をして当施設を訪れた選手がいれば、問題点を聞き取り、身体の評価を行った後、必要なサポート方針を考え、選手に提案。ケア、トレーニングなどの指導を行い、必要であれば医療機関とも連携します。学内の機関ではありますが、専門家のスタッフが揃っているところが特徴です。

このアスリートサポートセンターでは、週に4日17:30から19:00まで、本学独自の制度である「メディカルアスレティックトレーナーコース(MAT)」に所属する学生トレーナー(総勢25名)が常駐し、ケアやコンディショニングを担当しています。学生ながら、4年次に国家資格のはり師・きゅう師資格を取得している者もいるので、その実技実習の場でもあり、彼らの育成・指導をするのも当センターの役割です。学生トレーナーにチャレンジさせつつ、私たち教員がサポートするよう体制を作っています。

ONE TAP SPORTSを入力する鍼灸学科3年生の野田功樹さん

ONE TAP SPORTSを導入した経緯は?

谷口さん:UNIVAS(ユニバス、一般社団法人大学スポーツ協会)さんから大学へのご案内でONE TAP SPORTSの存在を知り、過去の実績などから、私が感じていた課題の解決に役立ちそうだと直感しました。というのも、当時は怪我をした後にアスリートサポートセンターを訪れる選手が多かったのですが、センターが目指すべき形は、センターの利用者を増やすことではなく、選手自身がセルフコンディショニングを行い、ケガを減らせるようになること、そのサポートができる体制なので、改善が必要だと感じていました。医療を学ぶ学生たちが、トレーナー任せではいけないなと。もっと自分の身体についても知るべきだと思っていました。

そんなふうに考えるようになった原点は、ポルトガルでのクラブチームのトレーナー経験です。ヨーロッパの選手たちは、トップになればなるほど自分でコンディションを分析して今の状態を言語化し、必要な解決策を選択する能力が高く、日本の選手・学生たちもそうあるべきだと常々思っていました。ONE TAP SPORTSを取り入れることで、彼らにもセルフコンディショニングの重要性に気付いてもらえるのではないかと考えました。

活用開始後、選手とトレーナーとのコミュニケーションの「質」が変わってきた

導入後、どのような変化がありましたか?

谷口さん:アスリートサポートセンターでは手始めに傷害報告書(インジュリーレポート)作成のツールとして活用し、クラブの顧問などとも情報共有しています。導入してまだ半年ほどですが、問題を自分自身やクラブ内で解決しようとする姿勢が見られるようになり、“トレーナー任せ”がかなり解消されました。自分たちで手に負えない症例のみを相談してくる選手が増えましたね。

ONE TAP SPORTSの入力は学生トレーナーに任せているのですが、彼らの意識や指導計画などにも向上が見られますね。これまで主観的なコミュニケーションが多かったのが、たまってきたデータに基づいて客観的に分析しようとする試みが見られるようになり、自然に会話にも反映されていますよ。専門用語を使ってみたりとかね。教育ツールとしてとても優れていると思いますし、ONE TAP SPORTSのおかげで学生にある程度任せられるようになってきました。

学生トレーナーとして活動している新井さん、野田さんの実感はどうですか?

鍼灸学科4年生の新井陽里さん
鍼灸学科4年生の新井陽里さん。陸上選手として競技を続けながら、はり師・きゅう師のライセンスを取得し、MATコースにも所属

新井さん:以前はGoogleフォームを使って電子カルテを作っていましたが、それでは確認できなかった選手のインジュリー履歴が蓄積されるようになり、一人ひとりの履歴や特性に合わせたプログラムが立てやすくなりました。似たような症例が別の人に起こった場合の参考にもなります。すでに鍼灸の資格は取得しているので、今後は大学院でスポーツ健康科学についても学び、人々の健康や身体づくりに携わっていきたいです。

鍼灸学科3年生の野田功樹さん
鍼灸学科3年生の野田功樹さん。洛南高校サッカー部トレーナー、MATコースに所属

野田さん:選手の状態がグラフによって一目で分かるようになりました。食欲がない、などの生活面の変化も可視化されて生活指導に役立っています。出身高校のサッカー部にも薦めたいと思っているところです。自分が学んでいる鍼灸の技術やスポーツ経験を、トレーナー活動に生かしていきたいです。

将来的には、学生中心で機能する仕組みにしていきたい

今後、どのように活用していきますか?

谷口さん:やはり大学のスポーツクラブで学生アスリートたちのコンディショニングに役立ててほしいです。現在は女子サッカー部が、疲労感、RPE(主観的運動強度)、睡眠満足度、脈拍など日々のコンディション測定に使用し、アスリートサポートセンターでモニタリングしていますが、これまで選手が感じていた主観的な身体感覚と、客観データには違いがあるということに気付く選手も多いようです。将来的にはGPSデータ連携も取り入れて、より精密なデータをもとにサポートしたいですね。全クラブの選手(約360名)にも使ってほしいと思っています。クラブごとにONE TAP SPORTSのセミナーを開くなど学内の普及活動を行っているところです。

レギュラーで活躍している選手ほど自己管理を厳密に行っているということを、このツールを通して知ってほしいと思っています。ONE TAP SPORTSを用いたロールモデルがつくれると、目指す姿が可視化され、努力の指標にもなります。一人ひとりの管理能力を上げることが、怪我の減少につながるはずですし、チームの成績にも貢献できます。結果が出れば、モチベーションも上がります。

実際に活用している学生を見ると、選手側にも、学生トレーナー側にも、成長が見られるので、このまま継続していけば、アスリートサポートセンターも学生中心で運営していけるくらいのレベルにできるのはと考えています。

鍼灸学科2年生で女子サッカー部に所属する河村祐実さん
鍼灸学科2年生で女子サッカー部に所属する河村祐実さん「自分のコンディションの変化が数値やグラフで可視化され、簡単に身体の変化や足りないものを知ることができるようになりました。コンディションが悪いと部活動にも勉強にも支障が出てきますので、身体をいい状態に保ち、両立を頑張ります」

アスリートサポートセンターやクラブだけでなく、大学の来年度の授業にも導入されるとか?

谷口 剛志氏 明治国際医療大学 鍼灸学部 はりきゅう学講座 講師

谷口さん:「スポーツIoT演習」という新たな科目を設け、ONE TAP SPORTSを使った実習を1〜3年生で行う予定です。データをもとにしたコミュニケーションやコーチングを学び、本センターで実践できるような授業を考えています。

当初、選手側のコンディショニング目的で導入したツールが、学生トレーナーの教育に効果を発揮したといううれしい発見があり、それが授業にも発展したという訳です。鍼灸をはじめ、さまざまな医療を学ぶ本学では、スポーツトレーナー志向の学生も多く、学生のうちにトップアスリートも使うようなツールで学び、コミュニケーション能力をつける意義は大きいです。今の学生は感覚よりもデータで示した方が反応も良いので、最適な教材ですね。スポーツの世界に限らず、将来、一般の人々の健康管理に携わる者としても身につけておきたい情報が詰まっていると思います。

 

取材・文/河津万有美  撮影/太田未来子