尾道高校ラグビー部|卒業後もラグビーを続ける選手のために、怪我情報を蓄積

広島県尾道市の私立尾道高校は、普通科に難関大学への進学を目指す最難関コース、難関コースを設置した地元でも有数の進学校だ。そして、同校のラグビー部 BURIKENS(ブリカンズ)は、全国高等学校ラグビーフットボール大会にこれまで16回出場(現在、15大会連続出場中)を決めている、ラグビーの強豪校でもある。文武両道を目指す選手たちにとって、時間はとても貴重なものといえる。限られた時間をうまく使いながら、勉強でもラグビーでもそれぞれが持てる力を最大限引き出すための秘訣とは。チームをけん引する田中監督と選手たちにONE TAP SPORTSの活用方法を伺った。

インタビュイー

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田中 春助
尾道高校 ラグビー部 BURIKENS(ブリカンズ)監督

1988年生まれ、大阪府出身。現役時代は、フッカー(HO)、スタンドオフ(SO)、フルバック(FB)として活躍。尾道高校を卒業後、福山大学在学中は母校ラグビー部のコーチおよび舎監を務める。花園で開催される全国高等学校ラグビーフットボール大会には選手として1回出場、指導者としては尾道高校のコーチ時代に13回、監督に就任してからは3回出場に導いている。同校では英語科の教員を務めている。

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佐藤 楓斗
尾道高校 ラグビー部 BURIKENS(ブリカンズ)2年生

2005年生まれ、熊本県出身。熊本市立東部中学校卒業。熊本サンデーズジュニア出身。ポジションはセンター(CTB)。来年のキャプテン候補。

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水谷 康生
尾道高校 ラグビー部 BURIKENS(ブリカンズ)2年生

2005年生まれ、三重県出身。四日市メリノール学院中学校卒業。ポジションはフルバック(FB)、ウィング(WTB)。男子セブンズユースアカデミー選手にも選抜されている。

卒業後の選手の進路を見越し、怪我の履歴をデータベースに

私立尾道高校ラグビー部BURIKENS(ブリカンズ)の構成について教えてください。

  • 選手人数/84名(1年生30名、2年生29名、3年生25名)

  • チームスタッフ構成/監督、ヘッドコーチ/BKコーチ、FWコーチ、アシスタントコーチ/舎監、トレーナー、アスレチックトレーナー、コンディショニングトレーナー、理学療法士、鍼灸師、スポーツ栄養士、メディセリスト/健康栄養士、アロマセラピスト 各1名、学生マネージャー4名

ONE TAP SPORTS導入の経緯は?

田中 春助 氏 私立尾道高校 ラグビー部 BURIKENS(ブリカンズ)監督
ONE TAP SPORTS画面を見ながら声を掛ける田中春助 監督

田中監督:使い始めたのは、2022年5月からですが、ONE TAP SPORTSについて知ったのは3年前です。当時、元ラグビー日本代表でキャプテンを務めた廣瀬俊朗さんが、隣町の中高一貫校でリーダー研修の講師をされると聞き、私も研修に参加しました。その中で、体調を自己管理するためのツールを使っていると聞いたのです。研修終了後、廣瀬さんと直接話す機会があり、「先ほどのツールは何ですか?」と質問。そこでONE TAP SPORTSを初めて知りました。

ただすぐに導入には至りませんでした。というのも、毎日、選手自身が体重や体調などを入力するというのは大変な作業です。自分の選手生活を振り返ると、本当に使いこなせるのか、と疑問がありました。それに私はラグビー部の監督であると同時に、英語科の教諭もしています。教員は日々、何かが起こり、対応に追われることも往々にしてありますので、なかなか導入に踏み切れませんでした。

しかし今年の春、ONE TAP SPORTSの担当者から話を聞く機会があり、使い方について掘り下げていくと、選手が未入力の場合、朝9時に通知が届くなど、自分からアクセスしなくてもONE TAP SPORTSからお知らせが自動で届く仕組みなどがあると知り、それなら使いこなせそうと思い、導入に踏み切りました。

導入前は、どのように選手のコンディションを管理していたのでしょう?

田中監督:選手が体温や食事などを書き込む日誌がありました。必要があれば私からも日誌を見られましたし、当初はそれで十分だと考えていたのですが、いつどんな怪我があったのかという情報を、データベースとして持っておけば、選手たちが卒業後に所属するチームの資産になるのではと。また、勝ち負けだけでなく、自分の成長にも目を向けてもらいたいという気持ちが出てきたことも、ONE TAP SPORTS導入を決めた理由のひとつです。

「なぜ入力するのか」目的をシェアすることで、選手の自主性を引き出す

選手の入力率を90~95%と高くキープするために取り組んでいることがありましたら教えてください

オンラインでインタビューに答えてくれた水谷選手(画面左)と佐藤選手(画面右)
オンラインでインタビューに答えてくれた水谷選手(画面左)と佐藤選手(画面右)

佐藤選手:入力率が高いのは、選手それぞれが目的を理解した上で取り組んでいるからではないでしょうか。朝の点呼の際に必ず、選手同士で声掛けするのが日課になっています。

水谷選手:自分を知るという目的を理解して、習慣化できている点が大きいですね。

田中監督:朝9時に未入力者の通知が届くと、グループLINEで入力を促すことはあります。でも監督である私から選手に何かを強制することは、もともと好きではありません。

以前リーダーとのミーティングで、「入力できていない選手は、どうしたらできるようになるだろう? 逆に、できる子はどうしてできるんだろう?」と問いかけたところ、「時間を決めてルーティン化されたら、誰でも忘れず入力できるのでは」という結論に。さらに私が、「全員の入力の有無を確認するのに最適なタイミングは?」と聞くと、「点呼のときです」と返ってきました。結果として、その会話から、自分たちで声掛けするという現在のやり方になりました。基本的に、私から何かをやってくれ、と頼むことはありません。常に問いかけ、本人たちの中にある答えを引き出して、なるべく自主的に動いてもらえるようにしています。

選手として使ってみていかがですか?

佐藤選手:毎日、体重を管理できるところは良い点です。私のポジションはセンターなのですが、もっと体重を増やしたいという目標があります。夕食後の体重と、翌朝起きたときの体重にどれくらい差があるのか、記録をつけているうちに、変化や傾向が見えてきました。

導入前は日誌があり、練習や私生活の状況を書き込んでいましたが、コンディションについては特に書かず、自分しか分かっていない状態でした。ですのでなにか不調があったとしたら、自己申告するしかなかったのです。

水谷選手:私の場合、チームで導入されるよりも前から、所属するアカデミーでONE TAP SPORTSを使っていました。ラグビーはカロリー消費の激しいスポーツなので、その分たくさん食べないといけません。ですので、前日の食事が、どれだけ翌日の体重の増減に影響したのか体重の変化が見えるのがいいですね。減っている場合は、もっとたくさん食べなきゃ、と自己管理ができます。ONE TAP SPORTSが部活でも導入されると聞いたときは、体重や体調面のことが分かりやすいよ、とチームメイトと会話していました。

ONE TAP SPORTSを入力している佐藤選手
ONE TAP SPORTSを入力している佐藤選手

ラグビーはフィジカルコンタクトが多いスポーツですが、どのように怪我の管理をしていますか?

田中監督:練習中の怪我はマネージャーが、試合中の怪我はトレーナーが入力し、怪我の履歴を残しています。継続的にONE TAP SPORTSを活用することで、どのような怪我が多いのか、また怪我の要因を探ることができるのではと期待しています。例えば、肩の怪我が多いなら、コンタクトの練習を減らそうとか、ウエイトトレーニングを増やそうなど、怪我の対策を検討することもできるはず。導入して1年経過すれば、練習内容の見直しに役立てられる可能性も感じています。また保護者への説明も、データに裏打ちされたものであれば、説得力も上がると考えています。

ほかのITツールも活用されているのでしょうか?

田中監督:私はITへの抵抗がないので、使えるものは積極的に導入しています。ちなみに最初に使い始めたのはスケジュール共有アプリでした。文武両道を掲げているからには、自主的に計画を立てることが重要と考えたからです。練習や合宿、遠征、大会などの情報が直前まで分からないようでは、計画もままなりません。高校生ですから、勉強もあるし、遊びたいでしょうし、休みたいという気持ちもあるでしょうしね。

ほかにもスタッフ側が事前にスケジュールを把握できていれば、自主的にどんどん提案してもらえるという相乗効果も見込めます。

選手へのスケジュール共有以外にも、保護者の皆さんにお子さんたちが何をしているのか、迅速に共有したかったというのもありました。選手の大半は寮生活です。親元を離れているお子さんの保護者の皆さんに伝えるためには紙媒体というわけにもいかないだろうと。とても便利なので現在も活用しています。

監督を含めると、スタッフが12名という体制は、とても充実していますね。

田中監督:コーチのほか、分野の異なる専門家たちにもスタッフとして参加していただいています。私立かつ強豪校だからこそ、こうした布陣が取れるというのもありますが、もちろんそれだけではなく、いろいろな人と選手を触れさせたいという考えが根底にあるからです。

私たちのチームには、全国あちらこちらから、それぞれの目標や夢を追う選手が集まっています。もちろんチームとしては「日本一を目指す」という共通のビジョンがあります。でもチームメンバーの一人ひとりがどう貢献するのかはそれぞれ違うはずです。つまり、日本一といっても、捉え方が異なるわけです。

私はラグビーの指導はできますが、栄養やコンディショニングに関して専門家ではありません。自分が思ったことをそのまま選手たちに取り組ませれば伸びるかといえば決してそうではありません。ですから、いろいろな専門家の力を借りながら指導していきたいのです。そういう意味でもスタッフ同士の関係もなるべくフラットになるように心がけて、それぞれの立場を尊重して対応するように心掛けています。

選手一人ひとりへの声掛けにも変化が

導入後、選手への声掛けは変わりましたか?

田中 春助 氏 私立尾道高校 ラグビー部 BURIKENS(ブリカンズ)監督

田中監督:もちろん、変わりました。体重が減っていれば、「ご飯、ちゃんと食べた?」と声を掛けますし、睡眠時間が短いときには「昨日は課題が多かった?」などと声を掛けるようになりました。ただ練習の強度は試合に向けて計画しているので、選手それぞれの体調に合わせてチーム全体の強度を変更することはありません。その代わり、練習で無理をし過ぎていないかどうか、気にかけて指導することができるようになりました。自分の高校時代を振り返っても、たとえ睡眠時間が3時間だとしても、自分からは言い出せませんでした。けれども、体調の優れない中で練習をして怪我をしてしまったら、本末転倒なのです。

つい最近、食事の量が少ない選手がいたので声を掛けたところ、「喉が痛くてあまり食べられなかった」と。でも体調が悪いというほどではないから、書かなかったと言っていました。でも導入後の今では少しの体調の変化も見逃さなくなりました。さらに私が必ずチェックしているのは、睡眠時間ですね。生活のリズムや寮生活でのストレスなど、何にしても変化は睡眠時間に表れると思うからです。

最小の練習で最大の効果を導く

朝練の時間を減らしたそうですが、どのような練習スケジュールですか?

田中監督:練習が長ければいいというものでもありません。いかに短時間で集中して練習できるかが重要です。現在、週5回(火〜土/6:30〜7:30)の朝練と、週2回(火・木/17:00〜19:00)の放課後練習を行っています。以前の朝練は、5:30スタートの2時間でしたが、今は1時間に変更。ただ、人数が80名以上いるためメンバー全員に目が届きにくいので、火曜の朝練は全員で実施しますが、それ以外の曜日はチームを半分ずつに分けて、水・金はAチームのみ、木・土はBチームのみという体制にしています。

また、私たち指導陣は練習開始前にモニターを用意し、そこに数枚のスライドを表示して、毎回、練習の目的を共有することで、選手たちの集中力を高められるように工夫しています。

練習開始前、選手たちに練習の目的を伝える田中監督
練習開始前、選手たちに練習の目的を伝える田中監督

今後、ONE TAP SPORTSをどのように使っていきたいですか?

佐藤選手:毎日、6時起床なので、23時までに寝ようと心がけるようになりました。寮生活なので洗濯は自分でするのですが、早めに済ませて、ストレッチなども行うように毎日のルーティンが変わりました。ONE TAP SPORTSへの入力はわずか2~3分。でもこの少しのことを毎日、積み重ねるのが大事。これからも自分の体調管理に役立てていきたいです。

水谷選手:睡眠時間を見える化できたことで、何時に寝れば調子がいいのかが分かるようになりました。これからも毎日の生活がコンディショニングにどう影響しているのか紐づけて考えられるようになりたいです。

田中監督:身体のコンディションはもちろん、心の動きも考慮して多角的に選手の情報や声を拾っていきたいです。遠征や練習が続くとき、選手たちがしんどいと感じているのがこれまでは肌感覚でしか分かりませんでしたが、これからはデータをもとに心の負担も視野に入れて、毎月、毎週、毎日のレベルで指導に役立てていきたいです。

 

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取材・文/松葉紀子(スパイラルワークス)  撮影/ブルムス 友紀(Yuki Willems)