未来を担う子どもたちを育てる、高校野球リーグ「リーガ・アグレシーバ」の試み

新シリーズ第1回目に星野氏が訪問したのは、大阪府堺市の硬式少年野球チーム「堺ビッグボーイズ」中学部の監督であり「リーガ・アグレシーバ」という高校野球リーグを主宰する阪長友仁氏。阪長氏がリーガ・アグレシーバを始めた根幹にある思いは何なのか。日本の学生野球にある課題感のもと、どのようなイノベーションをもたらそうとしているのか。星野氏との対談形式でお送りする(文中敬称略)。

インタビュイー

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阪長 友仁
NPO法人BBフューチャー理事長、堺ビッグボーイズ 中学部 総監督、一般社団法人Japan Baseball Innovaiton 代表理事

1981年生まれ、大阪府出身。新潟明訓高校3年生時に夏の甲子園大会に出場。立教大学野球部で主将を務めた後、大手旅行会社に2年間勤務。「野球を広める活動をしたい」との思いから退職し、海外へ。スリランカとタイで代表チームのコーチを務め、ガーナでは代表監督として北京五輪アフリカ予選を戦った。その後、青年海外協力隊としてコロンビアで野球指導。JICA企画調査員としてグアテマラに駐在した後、2014年に帰国。大阪の硬式少年野球チーム「堺ビッグボーイズ」の中学生チームの指導者を務めつつ、2015年から、高校野球におけるリーグ戦の取り組み『リーガ・アグレシーバ』を開始。

進行

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星野 明宏
株式会社オフィスホシノ代表取締役、東芝ブレイブルーパス東京 プロデューサー

1973年生まれ、東京都出身。桐蔭学園高校、立命館大学ではラグビー部で活躍。その後電通に入社し、スポーツビジネスを手がける。2007年に静岡聖光学院中学校・高等学校の教員となり、ラグビー部監督に。週3日、1日90分という練習環境ながら、当時弱小高校だったチームをわずか3年で全国大会初出場に導いた。独自理論や手腕を買われ、U17・18カテゴリーのラグビー日本代表監督にも就任。静岡聖光学院では教頭、副校長そして校長を歴任した。2022年7月、東芝ブレイブルーパス東京のプロデューサーに就任。著書に『凡人でもエリートに勝てる人生の戦い方。』 (すばる舎)。

枠組みをつくり、各地でユニークなルールを柔軟に取り入れる高校野球リーグ

阪長氏は新潟明訓高校で夏の甲子園大会に出場し、立教大学野球部では主将を務めた経験を持つ。その後、大手旅行会社に就職したが、野球を広める活動を志して海外へ。国際協力機構(JICA)の企画調査員としてグアテマラに赴任中、ドミニカ共和国の育成アカデミーを視察し、衝撃を受けた。

そこにはMLB各球団のアカデミー組織があり、目先の勝敗にとらわれず、選手それぞれの才能を大きく伸ばすことを最優先に考えた指導が行われていた。感銘を受けた阪長氏はその後も幾度となく訪問し、MLB各球団のアカデミーのほか、同国のウインターリーグや少年野球組織のプログラムから多くを学び、2014年に帰国。2015年に大阪府内の6つの高校が参加した「リーガ・アグレシーバ」という取り組みを始めた。

リーガ・アグレシーバの最大の特徴は、リーグ戦形式であること。負けたら終わりのトーナメントではないので、大胆なチャレンジができ、多くの選手が出場機会を得られる。細かなルールは地域ごとに異なるが、投手には1日100球などの球数制限が課され、変化球はカーブとチェンジアップのみで投球全体の25%以内、打者は木製または低反発の金属バットを使う、といったレギュレーションを設けている。もちろんこれは投手の肩肘の怪我を防ぐことや、打者にボールをしっかり捉える力をつけてもらうことが狙いだ。同リーグは今年、21都道府県の約130校(2023年3月時点)が参加するまでに拡大。趣旨に賛同する指導者の輪が大きく広がっている。

(星野)本日はどうぞよろしくお願いします。阪長さんがされている取り組みの細かい内容に関しては、すでに多数報道されているので割愛するとして、根幹にある思いはどのようなものでしょう。取り組みを全国に広げていく上で、何を重視されているのですか?

(阪長)よろしくお願いします。最も大事にしたのは仕組みづくりです。参加校と日程を考えた上で、いかにいいカードを組み、接戦を増やし、選手と指導者の学びに結びつけるか。苦心しているのはそこです。リーグに参加したのはいいけれど、大差の試合ばかりで選手がモチベーションを下げてしまったり、勝ったはいいが何も収穫がなかった、というのでは、継続的な取り組みになりませんから。

具体的にどんな工夫をなさっているのですか?

阪長さんと星野さん

例えば大阪や新潟では、環境が恵まれているとはいえない公立校と、甲子園を狙う私立高の両方が参加しています。力量差があるケースも多いので、リーグを「アドバンス」と「エキサイト」の二つに分け、それぞれの上位に入ったチームで決勝トーナメントを行う、という試みをしています。ちょうどいい塩梅(あんばい)でファイトできる工夫をすることで、選手たちが前向きな気持ちでプレーできれば、参加してよかったと思っていただける。そのための仕組みづくりを大切にしています。

阪長さん主導でつくった仕組みをベースに、さまざまな地域でリーグが発展しています。試合をする上での細かいルールも、阪長さんが主導して考えられているのですか?

地域の先生方が考えて実施しているケースもあります。例えば「リエントリー」(※いったん試合から退いた選手の再出場)。野球にもラグビーにもないルールですが、ソフトボールでは認められています。これを取り入れたのは地域の先生のアイデアでした。そういえば星野さんも、ラグビーでさまざまなユニークな取り組みをされていると聞きます。

東芝ブレイブルーパス東京で今年、都内のラグビースクールに通う少年少女を対象にしたラグビー大会「ルーパスカップ」を作りました。これは独自ルールを設けたユニークな大会でして、ラグビーの5大憲章を念頭に、以下の6つを定めています。

①作戦はコーチではなく子どもたちで決める(=結束)
②コーチ、親は子どものプレーを怒らず褒める(=尊重)
③親は子どもの良いプレーをその場で書き留める(=情熱)
④毎試合後に対戦相手と5分間の感想戦を行う(=品位)
⑤対戦した相手とチームを組み、ミックス戦を行う(=結束)
⑥最後に参加者全員で「あいさつとルーパス締め」を行う(=規律)

野球にはない感覚ですね。

中でも良い試みと思っているのが、試合後に行う5分間の感想戦です。対戦相手と「実は今回こういう作戦であなたたちを倒そうとしました。あなたたちはどうやって私たちを倒そうとしたのですか」という話し合いをするんです。やってみると、例えば小学生だと高学年よりも2、3年生の方が活発に意見を出す。その様子を見ていると、確かにラグビーではフィジカルの成長が欠かせないですが、心の成長の場はいつでもつくれることを実感します。

ぜひ参考にさせていただきたいですね。

時には選手たちの成長を妨げる「勝利至上主義」との両立

リーガ・アグレシーバの取り組みにおいて、これまでどんな苦労がありましたか? ネガティブな側面もあったのではないでしょうか。

阪長友仁さん(堺ビッグボーイズ)

ある都道府県で、取り組みがうまくいかなかったことがあります。甲子園にも何度も出場しているある私立高校の監督さんが、私たちの取り組みを素晴らしいと評価してくださり「ぜひやろう」となりました。そこで、つながりのある別の私立高校の先生方にお声がけをしてミーティングを行ったものの、まとまりませんでした。

それは、どういった理由で?

皆さんそれぞれの思惑があるようです。おそらく、こういった取り組みに参加することで、チームの本来の目標から遠ざかると考えたのでしょう。目標とは、都道府県大会そして甲子園での全国大会というトーナメントを制することですから、常に意識するのは「絶対に勝たなくてはいけない」戦い方。それに対し、リーグ戦というフォーマットが合わないと考えたようです。

勝利至上主義の問題点ですね。

それと、私たちが掲げる「スポーツマンシップを学ぼう」というコンセプトが敬遠された面もあったように思います。目先の大会に勝つという短期的視点で考えると、スポーツマンシップを学ぶことは、勝利とストレートに結びつかないと考えられたように思います。でも本来、スポーツマンシップを学んで実践することで、チームは強くなり選手個人も成長できる。このことを伝える力が私に不足していたと反省しています。

私は2021年まで教育者でしたが、教育改革も同じです。以前、暗記偏重型のこれまでの学習プログラムに、アクティブラーニングやプロジェクトベースドラーニングを加えていくことについて議論したのですが「これをやると学力が落ちる」という意見が出てきました。

まったく同じですね。

これには、ダブルゴールが必要なんです。学力も上げるべきだし、社会に出てから必要な力も上げるべき。両方が必要で、それは工夫すれば両立できないことではない。今はテクノロジーが発展していますから、例えば50分の授業を35分に凝縮し、残り15分でアクティブラーニングやプロジェクトベースドラーニングを入れることは可能なんです。このことを理解してもらうのは難しい。高校野球の勝利至上主義と、非常によく似ています。

現状の高校野球のシステムも、選手としての成長と人間としての成長というダブルゴールを考えれば、改善できるポイントはあります。もちろん、都道府県予選から甲子園大会というトーナメントのフォーマットは日本の野球の発展に大きく貢献してきましたし、今後も欠かせない。一方、負けたら終わりのトーナメントだからこそ、思い切った選手起用やチャレンジがしにくくなる。

勝って安心したいのは選手ではなく指導者ですよね。そして、メンバー選考にもデメリットが生まれる。トーナメントでは、指導者は野球でいえば最強の9人、ラグビーでいえば最強の15人を選びたい。だから、どうしても「誰を落とすのか」を考え、選手のマイナス面ばかり見てしまう。でもリーグ戦では、例えば2軍戦で面白い動きをしていた選手を引き上げてみたりと、ポジティブな面も見るようになる。

リーガ・アグレシーバでは、トップチームではない選手を出場させて経験を積む機会とする学校もありますし、出場イニング数を制限してより多くの選手を起用したりと、柔軟にルールを決めています。

星野明宏さん(東芝ブレイブルーパス プロデューサー)

野球はゲーム時間が長いから、1試合の中で多くの選手が出られるように考えておられるわけですね。こういったことは、工夫次第でいくらでもできますね。阪長さんの指導動画を見て、ゲームライクな練習が多いことに感銘を受けました。「試合でこういう現象が起きる」ということから逆算した練習をすることを、ラグビーでは「ゲームライクプラクティス」と呼びます。多くの指導者は「コーチングとはコツを教えること」という勘違いをしているように思います。「肘をこの位置に持ってきてこうやって打て」というように、自らのこだわりとかコツを教えることだけが指導ではない。大事なのは、試合で起きる現象から逆算し、結果へとダイレクトに結びつけること。特に最近こだわっているゲームライクな練習はありますか?

最近なかなか面白いと思ったのは、ゲーム形式の対戦で初球ストライクを2ストライクとカウントする練習です。ピッチャーは1球でツーストライクを取れるので、初球から集中する。バッターは見逃すと一気に追い込まれてしまうので、1球目から積極的に打ちにいく。これはいい練習でしたね。

つまり、打者に1球目から打ちに行く積極性が欠けていて、投手の方はなかなか1球目でストライクを取れない、という現状から逆算したわけですね。現状の課題をどのように修正するか。そのメソッドを考えることこそがコーチングだと思います。

実は先日、チームの練習試合中に、相手チームにお願いして二塁の塁審をさせてもらったんです。二塁の塁審はゲームがよく見えるんですよ。外野手と内野手の連携がどうなのか、選手たちがどんな考えでプレーしているのかが分かり、非常に勉強になりました。

自由とは違う、リスクを恐れずチャレンジを引き出すための「フレーム」

今の教育、そして部活動における大きな問題がリスク管理です。私は中高の部活動改革の諮問委員も務めているのですが、新しい何かを導入しようとすると、周囲から必ず「いじめが生まれないか」「良くないことが起きないか」という意見が出る。生徒同士のトラブルや事故、負傷といったリスクをいかに回避するか。そこにセオリーはなく、現場ごとに考えなくてはいけない。

まさにそうですね。

指導者が考えるべきなのは「リスクがあるからやらない」ではなく「やりながら、どうやって一緒にリスクを減らすか」。リスクに対峙することは、人間力を高めることにつながる。できない理由を並べるのではなく、共に危機を乗り越えていく。阪長さんはその訓練をすごくしていらっしゃるように思います。

阪長友仁さん(堺ビッグボーイズ)
堺ビッグボーイズで活動中の阪長氏(写真提供:阪長氏)

指導者の思考や人生観は、子どもにそのまま伝わります。与える影響はすごく大きい。それを意識して日頃から指導していますね。

その点、阪長さんは海外で野球を学んでこられました。

海外といっても開発途上国ばかりで、そういった国の人たちの生き方はすごくアグレッシブ。驚くことだらけでした。日本で生まれると、気付かぬうちにレールのようなものに乗せられ「チャレンジしない方が得策」という考えや「小手先で、うまいことやっていれば成功する」という人生観が何となく形成されていく。でも私が途上国で見てきた人たちに、そんなものはない。

いい意味で「ダメでもともと」なんでしょうね。

そうなんです。でも「生き抜く力」は、そういった海外の人の方がずっとある。今現在で言えば、日本はそれなりに豊かで教育水準も高い。でも、この先さらにグローバル化が進んでいった時、今の日本の考え方ではだめなんじゃないか。途上国を見れば見るほど、そう思うようになりました。それで日本に帰り、野球という競技を通じて、この国の未来をつくっていく子どもたちのために活動したいと思ったことが、今につながっています。

アジアの開発途上国の若者と接して、彼らがすごくキラキラしていることに気付かされますね。これから成熟していく社会の中で「俺たちがこの国をつくっていくんだ」という自負にあふれている。それに対して日本は少しくたびれている。成功事例があるから先駆者の言うことを聞いておけばいい、という時代は良かったですが、今はそうじゃない。答えのないテーマを仲間と共有し、協力し合いながら知恵を働かせ、ひとつのことをつくり上げる経験が大事。その最適な答えが、スポーツにはあると思っています。

まさにそう思います。

今、部活動改革のさまざまな活動を行っていますが、アクティブラーニングやプロジェクトベースドラーニングの題材としてスポーツは非常にいい。だから放課後の課外活動として学校教育から切り離すのはもったいないと思います。もっと教育の中に組み込めれば、日本の未来は良くなると思っています。今までの指導は勝利至上主義のもと、スポーツから得られる恩恵をロジカルに言語化してこなかった。その部分を我々が発信し、練習メニューなどを通じて体現していく必要がある。そこは気をつけなくてはいけないポイントですよね。

阪長友仁さん(堺ビッグボーイズ)

ドミニカ共和国で、向こうの指導者の方々に本質的な部分をたくさん気付かせてもらいました。例えばチャンスで打てずに落ち込んでいる選手に、どんな声がけをするか。面白かったのが「そもそも野球は、3割打てたらすごいというスポーツ」という考えでした。つまり「7割は凡退するものなのに、打てずにくよくよしていることはナンセンス。それは野球の本質を理解できていない」ということ。だから「まったく問題ない。次はいいバッティングができるから、切り替えて集中していこう」と言うだけだと。これは人生にもつながりますよね。物事はうまくいかないことの方がはるかに多い。だからといってチャレンジしなければ、うまくいく機会を失うことになる。指導者はこのことを、もっと理解しなくてはいけない。勝利を目指す中で失敗しても、次のチャンスは必ずある。そう言い切れる環境をつくらなくてはいけません。

そのために重要なのはフレームです。指導者が作ったフレームの中で「自由に考えて判断しなさい」と言えることが大事。フレームがなく、ただ「自由にやっていいよ」と言うだけでは、選手は不安を感じ、すべてがぐちゃぐちゃになってしまう。逆にすべてを細かく指導し、報告・連絡・相談を求めるのもだめ。ビジネスの世界で「マイクロマネジメント上司」という言葉があります。部下の行動を細かくチェックし、過干渉してしまう上司をいいますが、スポーツも「マイクロマネジメント監督」では勝てない。監督がスタンドにいるラグビーと監督がベンチで指示を出す野球でフレームの大きさは異なりますが、その有無は重要だと思います。

私が思うのは、監督とチームはそもそもチームメイトだということ。選手の役目は勝利に向かってプレーすること。監督の役目は勝利に向かって的確なマネジメントをすること。立場は違うけれど、勝利に向かう同じ仲間。監督も勝利に向かって一緒にやっていく。負けたら監督の責任だから、思い切り勝利に向かってプレーすればいい。選手たちにはそう伝えています。

スモールスタートで思いを広め、少しずつ広めていく

最後の質問になります。学校の理事長や校長、教育委員会、保護者や部のOBといったチームのステークホルダーと接して、彼らの声をうまく鎮めたり、自らの意見を通していったりするための秘訣はありますか?

阪長友仁さん(堺ビッグボーイズ)

まず、思いを強く持つこと。僕には、今の日本の野球界のシステムを変えていきたいという思いがあります。なぜなら、そこに生身の子どもたちがいて、スポーツ界の未来、ひいては日本の未来があるから。この思いを強く持つことが大切です。その上で、まずはスモールスタートすること。リーガの試みも、最初は大阪や新潟で小さな規模から始めました。いい試みを地道に続け、縁のある方々を中心に少しずつ浸透させていく。それを例えば記者さんがメディアで取り上げてくださったりすると、話を通しやすくなる。

野球界だけでなく日本のスポーツ全体に言えることかもしれませんが、システムが摩耗していますよね。古い体質を壊すことが目的じゃない。既存のシステムに摩耗している部分があるから、そこは変えましょう、ということですよね。

例えば甲子園大会を批判する人はいますが、日本の野球界にとって大きな価値であるのは間違いなく、なくなっていいものでは決してない。既存のシステムの中で自分が何をできるかを考えつつ、日本の野球界のシステムを変えていきたい。その思いを強く持ち続けることだと思います。

スポーツ指導者にとって大事なのは、学び続けること。そして今、一緒に戦っている子どもたちが社会に出た時、そして20年後、30年後を見据え、そこから逆算し、机上の勉強だけではできない部分を埋めてあげること。その考えがしっかりしていれば、ステークホルダーを納得させることはできるはずです。

まさにその通りです。そして実は大事なのが、実際にお話をする時は、にっこりと笑うことですね(笑)。

よく分かります。厳しいことをお願いする時でも笑顔でいることは、優れた営業マンが提案を通すときの秘訣です。私も会社員でしたし、組織の長をやったこともありますが、優秀なビジネスセンスを持つ人は、大胆にいく面と、笑顔で意見をうまいこと通していく面をそれぞれ持っています。

高校野球は誰のためにあるのか。もちろん高校生のためです。その中にはトップを目指す選手もいれば、野球という競技が好きで純粋に楽しみたい選手もいる。その中で、どんな形が選手たちの成長につながるのか。そのために指導者は何ができるのか。それを常に考えています。

そのピュアな熱が根幹にあるからこそ、取り組みが全国に広まっていったわけですね。熱は人から人へと伝播します。誰かが誰かに熱を伝えると、受けた人がそれをさらに擦って大きな熱にしていくことがある。阪長さんはおそらく、人の心に火をつけることに長けておられるのでしょう。

自分ができていないことは、選手には言いません。子どもたちに「チャレンジしろ」と言いながら、自分は何にも挑戦していない。それでは説得力がないし、むなしくなります。もちろん順風満帆なことなんてほとんどないけれど、普段の指導もこういったリーグの取り組みも、すべてが前例のないチャレンジ。これからも挑戦を続けていきたいですね。

指導者が元気な背中を見せて「大人になるのは悪くないぞ」と示してあげたいですね。スポーツの指導と子どもたちの成長をロジカルに捉え、スポーツを通じて子どもたちにチャレンジを促すことで、世の中を良くしていきたい。そういったお考えがよく分かり、非常に共感しました。今日は貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

こちらこそ、引き続きどうぞよろしくお願いします。

 

文/前田成彦  撮影/水野真澄