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テーマは「#ThinkFemaleAthlete 女子スポーツ選手のコンディション管理を考える」
オープニング:ONE TAP SPORTSユーザー「女子選手の月経・コンディション管理」調査結果をご紹介。8割の女子選手が月経に関して困りごとを抱えている
セッションに先立つオープニングトークには、ユーフォリア社の代表、橋口が登壇。アスリートのコンディション管理システムONE TAP SPORTSのユーザーを対象に、オムロンヘルスケア協力のもと実施した「女子選手の月経管理に関する実態調査」の結果を紹介しました。
408名の選手から回答が得られた本調査では、「月経に関して困っていることはありますか」との質問に「はい」と答えた人が全体の8割にものぼりました。一方で「婦人科を受診したことがありますか」との質問には、9割の人が「いいえ」と回答。月経への悩みがありながらも婦人科受診にはいたらないことが分かりました。
続いて指導者や管理スタッフ41名を対象とした調査では、「チームでの月経管理を行っていますか」との質問には、85%が「はい」と回答。ONE TAP SPORTSには月経管理機能もあり、指導者のコンディション管理に対する意識の高さが見られました。
チーム内コミュニケーションについて、「チーム内の選手と月経について話すことがありますか」との質問には、「頻繁にある」と「たまにある」の回答の合計が約6割と過半数を超えたものの、「まったくない」と「めったにない」という回答は約3割。また「女子選手の体調管理について難しいと感じることは何か」との質問に、最も多い回答が「月経との関わり方」でした。
日頃よりONE TAP SPORTSを活用しコンディション管理を行うチームでも、指導者側の「月経管理」についての意識は高いものの、最適なアクションを模索している様子がうかがえました。
Session1:今「生理は必要」を発信する理由
続いてのセッション1では、関西学院大学の富田欣和教授をモデレーターに迎え、中長距離の国内トップ選手が集うランニングチームTWOLAPS TRACK CLUB代表であり新谷さんのコーチも務める横田真人さん、現役の女子陸上競技選手であり10,000メートルとハーフマラソンの日本記録保持者である新谷仁美さんがクロストーク。選手、指導者それぞれの立場から、どのように生理と向き合ってきたのか、実体験を交えながらお話いただきました。
昨年の1月ごろからTwitterやメディアで、自身の生理についての体験や考え方を積極的に発信している新谷さん。現役のアスリートが生理について率直に語る姿勢に、大きな注目が集まりました。これに対して富田さんは「なぜ今、『生理は必要』という情報発信をはじめたのでしょうか」と、その動機を尋ねます。
新谷さんは「スポーツ選手であるか否かに関わらず、生理に悩んでいる人たちをたくさん見てきた」と明かし、自分自身が無月経を経験したことからも「生理についても発信しようと最初から決めていた」と語りました。
横田さんも「女子選手にとって生理は必要なもの」という認識に基づいてコーチングを行っているといいます。また男性コーチに生理の話をすることに抵抗がある選手もいることから、「女性スタッフを含んだ体制づくり」の大切さを訴えました。
続いて新谷さんは自身の経験から、「生理に対して間違った認識をしている人が少なからずいる」と語りました。とくに昔はスポーツ関係者たちの間で、「生理がある選手は太っている」「生理がない方がパフォーマンスが上がる」など生理に対する否定的な意見があったそう。そうした誤った理解が広がり、生理はコンディション管理にとって重要なものにもかかわらず、隠されてしまうようになったのです。
新谷さん自身もかつて無月経を経験したときには「痩せすぎ」が原因だと思っていたことを告白。「後に精神的な不調が原因だったことに気づいた。生理と体重は直接的に関係ない」と語りました。生理による体調の変化や無月経の原因は人それぞれなので、選手自身が状況を指導者に伝えるなど、コミュニケーションをしっかりとることが重要だと訴えました。
質疑応答の時間では、視聴者から新谷さんに対して、「低用量ピルの服用についてどのように考えているのか」という質問が寄せられました。新谷さんは「私自身はピルを使用していません」としつつも、「それが絶対に正しいわけではない」と回答。ピルにはメリットもデメリットもあることから、ドクターの意見なども参考にしながら、選手自身が自分の身体と相談して服用を判断することが大切、と続けました。
※Session1の全編は動画でご覧いただけます(64分)。
Partner Session:基礎体温「知ることからはじめよう」
続くパートナーセッションでは、オムロン ヘルスケアの石崎恵さんが登壇。生理周期を知る上で欠かせない「基礎体温」について解説しました。
基礎体温は、朝目覚めてから身体を動かす前の、安静時に測ります。現代の女性の場合、生理前の卵胞期の平均体温が36.0〜36.2℃(低温期)、生理後の黄体期はそこから0.3~0.5℃程度高くなる(高温期)と言われています。そのため基礎体温を記録することで「月経周期のどこにいるのか」「次の月経はいつ頃なのか」「排卵があったのか、なかったのか」「妊娠しているのか、いないのか」などさまざまなことがわかってきます。
さらに石崎さんは、基礎体温とホルモンバランスの関係を、グラフを用いて説明しました。
グラフの上段にあるようにエストロゲンとプロゲステロンというふたつの女性ホルモンの分泌量が生理期と排卵期を境に変化していることがわかります。さらにこの変化は低温期と高温期の入れ替わり(グラフの下段)ときれいに呼応しています。これが「正しくホルモンバランスが取れている状態」ということです。
ではそれぞれの女性ホルモンは、身体のなかでどのような役割を果たすのでしょうか。まずエストロゲンは、肌の調子や髪のツヤなどに深く関わっているとされます。そのため「美のホルモン」とも呼ばれ、エストロゲンの分泌量が増えると「肌はプルプル、髪はツヤツヤ」になり、さらにポジティブな感情を引き出す効果があることもわかっています。そしてプロゲステロンの別名は「守りのホルモン」。母のホルモンとも言われており、妊娠するための準備をする役割があるとされています。この二つの女性ホルモンの分泌量が変化することで、生理前から生理中、生理後に心や身体にさまざまな変化が訪れるのです。
石崎さんは基礎体温の記録を続けるための5つのコツも紹介してくれました。一つ目はONE TAP SPORTSをはじめとしたアプリ使用すること。手帳に書くという手もありますが、やはり自動でグラフを作成してくれるアプリは便利です。多くのアプリに搭載されているアラーム機能を目覚まし代わりに使うことが二つ目のコツ。アラームを設定することで、測定し忘れが防げます。三つ目のコツは自分にとって使いやすい体温計を選ぶこと。オムロン ヘルスケアでは、スマートフォンアプリと連携し、アプリに自動でデータを転送してくれる体温計(MC-652LC)も登場しています。四つ目は記録できない日があっても気にしないこと。数日空いてしまっても問題はありません。グラフを俯瞰して見た時に何となく二層になっていることが分かれば十分です。そして最後のコツは、基礎体温とあわせて「からだ日記」をつけること。ちょっとした体調変化やその日の気持ちなどを日記につけておくと、生理と心身の関係性がよりクリアに見えてきます。
Session 2:女性アスリートのコンディション管理の基礎知識
最後のセッションを担当したのは、日本体育大学の須永美歌子教授です。オリンピック委員会の医科学スタッフとしても活躍し、女子選手のための効率的なコンディション管理やトレーニングプログラムの開発に取り組んできた須永先生。その豊富な知見を元に、女子選手が抱える健康障害の実態から、無月経と運動パフォーマンスの関連性、さらに月経周期にあわせたコンディション管理のコツまで、幅広くお話いただきました。
すべての女子選手、および指導者の皆さんに知っておいていただきたいSession 2の詳細は、記事の後編として後日公開いたします。
文/福地 敦