筑波大学蹴球部|選手とスタッフのコミュニケーションが円滑に。怪我の重症化を防ぐ

創部はなんと、明治時代という伝統を持つ筑波大学蹴球部。毎年Jリーグへ選手を輩出し、全日本大学サッカー選手権大会では優勝9回、準優勝4回を記録する強豪チームのひとつだ。2019年からトップチームにONE TAP SPORTSを導入し、2020年には全選手へと利用を拡大させた。どのようにデータ活用しているか、学生トレーナー・選手の皆さんに話を聞いた。

インタビュイー

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秋田 遼
筑波大学蹴球部 コンディショニングコーチ チーフトレーナー

1996年生まれ、新潟県新潟市出身。6歳の頃からサッカーを始める。2014年に筑波大学入学と同時に蹴球部へ。2015年にトレーナー活動を開始、大学2年次終了と同時に選手活動を引退。現在はトップチームチーフトレーナー兼コンディショニングコーチ(2019シーズン)。

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宮﨑裕大
筑波大学蹴球部 トレーナー局長

1997年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。7歳からサッカーを始める。2017年、筑波大学入学と同時に蹴球部へ。現役選手として活動しながら、トレーナー局長としてONE TAP SPORTSの管理とリハビリチームの運営に従事している。

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浦和史哉
筑波大学蹴球部 学生トレーナー

1999年生まれ、東京都中野区出身。5歳の頃からサッカーを始める。現在も選手として活動中。2018年に筑波大学に入学し、蹴球部を選択。そこで感じたトレーナーへの憧れから、入部と同時にトレーナー活動を開始した。現在部内ではトップチームのチーフトレーナーを務める。

トップチームから使い始め、全選手へ利用を拡大

蹴球部の構成について聞かせてください。

  • 選手人数/160名(1〜4年生の合計、うち4年生40名)
  • チーム構成/30名×5チーム
  • チームスタッフ構成/総監督、監督、学生トレーナー6名、学生スタッフ15名

毎年4月には卒業する選手、新しく入部する選手が入れ替わりながら、常に160名ほどの選手が所属しています。

ONE TAP SPORTSを導入したきっかけは?

チーフトレーナー秋田 遼氏(以下、秋田チーフトレーナー):実は以前、他社のコンディショニング管理ツールを1年ほど使っていました。ツールへの理解が深まると同時にいろいろな課題を感じるようになりました。そのひとつは入力率の低さでした。選手がスマホから簡単に入力できる機能があればと思っていました。そんなときに、筑波大の先輩であるユーフォリア社の社員の方との接点があったんです。そこでコンディショニング管理の悩みを伝えたところ、ONE TAP SPORTSを紹介され、興味をもちました。

蹴球部でONE TAP SPORTSをどう活用できるかについて、ユーフォリア社との具体的な議論を経て、2019年初頭からONE TAP SPORTSを導入することになりました。昨年はトップチームに所属する30名のみでしたが、2020年からはすべての選手(160名)に利用を拡大しています。

ONE TAP SPORTS導入前はどのようにコンディション管理をしていたのですか?

トレーナー局長宮﨑裕大氏(以下、宮﨑局長):私が選手へ入力を促したり運営の管理を担当しているのですが、ONE TAP SPORTS導入により選手のデータを一元管理できるようになり便利になりました。以前からプレータイムや傷害記録はExcelに入力して管理していたのですが、なかなか活用しきれていませんでした。ONE TAP SPORTSでひとつの画面でまとめて閲覧できるようになって、データが活用される場面が増えたと思います。

選手のトレーニング計画(内容と時間)もONE TAP SPORTS上に表示されます。トレーニング計画を入力してそのトレーニングの負担感はどうだったのか、主観的運動強度(RPE)をセットで入力するという仕組みが採られています。これによってトレーニングに関する情報も、しっかり管理・蓄積されるようになりました。

スマホで本日の体調を入力する選手
朝起床すると、選手は自分のスマホから睡眠時間や疲労感、体重などその日のコンディションを入力する。かかる時間は30秒ほど

煩雑にならないよう入力する項目は絞り、選手一人ひとりの特性に合わせた緻密な管理を実現

トレーナーとして、どんなデータを重要視していますか?

学生トレーナー浦和史哉氏(以下、浦和トレーナー):重点的にチェックする項目は、疲労度・睡眠・体重・痛みの4つですね。最近だと新型コロナウイルス対策として、コメント欄に記入された体調も把握するようにしています。このほかに毎練習後に選手が入力するRPEですね。練習で感じた主観的な強度を10段階で記入してもらい、その後のトレーニング内容の組み立てに活用しています。

秋田チーフトレーナー:ONE TAP SPORTSではさまざまなデータを取得できますが、項目が多くなると追いかけるのが大変になるので、継続的に注目する項目は絞っています。取得するデータを通じて、選手の個性に気づくこともあります。例えば試合後、体重が元に戻るまでの期間は半日~2日間など、選手によってさまざまだと知りました。体重は試合で20%以上減ると脱水状態の危険性がでてくるので、選手自身も気にする項目です。

データ取得項目を設定する際に意識していることは?

秋田チーフトレーナー:選手にとって、入力する項目が多くなりすぎないように気を付けています。朝一で毎日何十項目入力しなきゃいけないとなったら、多分続かないと思うので(笑)。朝は前述の4項目は最低限入力してもらい、練習後にRPEと練習時間を入力してもらっています。

浦和トレーナー:朝は選手が自分でスマホから入力しますが、練習後にトップチームではトレーナーが選手に声掛けをし、RPEの10段階でどれくらいかを聞いて、手元のタブレットから代わりに入力しています。

選手のコンディションを確認するトレーナーたち
トレーナー陣は管理者用画面から、各選手のコンディションのチェックを行う

宮﨑局長:たしかにデータ入力の習慣化は課題ですね。いまトップチームはほぼ100%の入力率ですが、試合になると選手一人ひとりに自分の出場時間を入力してもらうのがなかなか難しい。試合後のRPEは入力してくれるんですが、細かい出場・退場時間はどうしても後回しになりがちなんですね。試合でも100%の入力を目指して、トレーナー局員が試行錯誤しているところです。

今年から使い始めたトップチーム以外では、入力率は60~70%くらいですね。こちらでも入力率を上げる取り組みを考えています。

秋田チーフトレーナー:これまでコンディショニング管理ツールを活用してきた4年生の選手を中心に、なぜツールを使うのかという動機付けはできていると思いますが、入力を習慣づけるのには時間がかかりますね。監督からも促してもらうなど、いろいろ試したのですがなかなかうまく行かず、今は選手の了解を得て遊び心も取り入れ、「入力を忘れたら100円」という募金制度になりました(笑)。募金が貯まったら、チームのトレーニング用具の購入にあてる予定です。

取得したデータをどのように活用していますか?

秋田チーフトレーナー:練習後のRPE×練習時間=セッションRPEといいますが、この数値を3日~1週間のトレーニング内容の評価と組み立てに役立てています。選手一人ひとりの状態を数値に落とし込めるのはとても有効ですね。セッションRPEの数値は、監督が重要視しているピリオダイゼーションにも活用しています。監督と数値を共有しながら、各選手の状態を試合に向けて細かく調整できるようになりました。

「自分の身体と対話する文化」をつくりたい

ONE TAP SPORTS導入後、選手からはどのような感想がありましたか?

浦和トレーナー:選手から「ONE TAP SPORTSなら、自分の状態を伝えやすい」という声をもらっています。身体の痛みや違和感などをコメント欄に書くことができますが、導入前は直接口頭で伝えていました。コメント欄を通じてトレーナーやコーチと些細なことでもコミュニケーションすることができ、言いやすいようですね。

秋田チーフトレーナー:ONE TAP SPORTSに入力しておけば、トレーナーやコーチが話しかけてくれると好評です。以前は試合に出してもらえなくなるのでは、と心配し正直に不調を言わない選手もいましたが、監督が「無理をして怪我をするのが一番困る」と常々言っていることもあり、痛みや怪我の情報が自発的に入力されるようになりました。ONE TAP SPORTSの導入は「選手が言える環境づくり」の一助になったと思います。

まだ導入して2年目ではありますが、怪我の重症化防止につながっていると感じています。怪我の件数自体は毎年そう大きく変わらないのですが、怪我で練習や試合に出られない日数が、トップチームで3割減りました。大ごとになる前に情報を吸い上げ、対処することの有効性を感じています。

今後の目標を教えてください。

浦和トレーナー:コンディション管理の習慣化をチームの文化にしていきたいですね。将来プロ選手になる人もいますが、将来の活躍の場はどこであれ、自分のコンディション管理は身に付けておいて損はない習慣ですよね。仕事においても、自己管理能力は大事なことだと思います。

宮﨑局長:浦和さんが言うように、コンディション管理が文化になることで、入力率の向上を期待したいです。今よりさらにデータが蓄積され、それによりチームを強くしていくのが私の目標です。

秋田チーフトレーナー:うちのチームからJリーグに行く選手が毎年いるのですが、選手にはどこに行っても自分の身体と対話し、言語化することを忘れないでいてほしいですね。それによって怪我をせず、ベストなコンディションでプロ選手として長く活躍してほしいと思います。

筑波大学蹴球部が掲げ続ける目標に、「ピッチ内外で日本一」というものがあります。試合に出る選手はもちろん、運営側のスタッフも日本一を目指すというものです。私が2020年3月に卒業なので、これからは宮﨑さんと浦和さんに任せて、これまでの取り組みが花開くよう心から応援したいですね。

コンディションを入力する3選手
ONE TAP SPORTSについて話を伺った、現役選手の3名。写真左から、3年生の駒崎公一さん、2年生の加藤太一さん、1年生の和田 育さん(学年は2020年3月2日の取材時のもの)

 

筑波大学蹴球部3年生の駒崎さん
駒崎さん:ONE TAP SPORTSで、自分の不調や怪我をしっかり伝えられるようになりました

 

筑波大学蹴球部2年生の加藤さん
加藤さん:記録を見返す習慣の中で、自分の身体への意識が変わったと思います

 

筑波大学蹴球部1年生の和田さん
和田さん:自分が入力した情報は、トレーナーやコーチが把握してくれる安心感があります

 

 

取材・文/はたけあゆみ 撮影/堀 浩一郎